「いい友達もったね」

 まだ温かいお重をしみじみと眺めていれば、後ろからお母さんが声をかけてきた。本当にお母さんの言う通りだ。私の親友は、世界一だ。

「ラジオパーソナリティになるなら、普通の就活じゃだめだね。お父さんに話さないとね」

 突然のお母さんの言葉に、わたしはハッと振り向いた。同時に、ピーピーと奥で炊飯器が音をたてる。

「私も赤飯炊いちゃった」

 そんな風にお母さんは小さく舌を出している。どうやらここにも、ミッドナイトスターのリスナーがいたようだ。

「本当にやりたいと思うことを見つけられて、お母さんは嬉しい。いい娘に育ったなぁって。あ、違うか。いい娘に育てたなぁって自画自賛よ」

 ふふっといたずらそうに笑うお母さんは、世界で一番の、自慢のお母さんだ。だけど、とお母さんはまじめな顔で言葉をつづけた。

「甘い世界じゃないからね。覚悟を決めて進むこと」

 さっきまで冗談を言っていたのに、今度はまっすぐな瞳でそう言われて、また泣きそうになってしまう。ラジオの世界にも、現実の世界にも、私の味方はこんなにいてくれたんだ。有言実行。もう生半可な気持ちでは行動出来ない。

 ──私は、やるんだ。
 自分の夢を、叶えるんだ。

 そんな決意のもと、お父さんのことを、お母さんと二人でどうにか説得して、わたしはパーソナリティになるために事務所に所属した。レッスン代などもかかるからバイトも増やした。幸いなことにタピオカ屋さんは朝の7時から夜の11時までだったから、講義のない時間やレッスンのない時間帯はすべてシフトに入れてもらうことが出来た。
 ラジオパーソナリティというのは、本当に狭き門だ。改めてラジオ番組を見て驚いたのは、アイドルやタレントさん、お笑い芸人さんに歌手の方などが持っている番組が圧倒的に多くて、ラジオパーソナリティだけを生業としている人は本当に少数だということ。そんな中、ユージさんは生粋のパーソナリティだった。そのことも、さらにユージさんへの憧れを強くした。

 なりたい自分、目指したい場所。遂に私は見つけることが出来たのだった。