そんな風に毎日を過ごしていく中、少しずつ季節は巡っていった。
ユージさんは相変わらずのイケメンっぷりで、番組も絶好調。星倉さんも変わらず、毎週月曜日の夜に来てくれている。たまにふたつ注文して、ひとつをくれることもあった。寡黙な人だと思い込んでいたけれど、心を開くと割と話すタイプらしく世間話も出来るようになった今、星倉さんと話すことは私の小さな楽しみになっているのも事実だ。
そんな私は、大学生の最大の関門──就活という時期を迎えている。
「みなさんこんばんは。今日も始まりましたミッドナイトスター!パーソナリティのDJユージです。さてさて、最近スーツ姿の若者をちらほらと見かけるようになりました。もう就活の時期なんですね。いやー、本当に1年早いです。就活生の皆さん、風邪に気をつけて頑張ってくださいね!」
最近は本当にそのことで頭を悩ませてばかりいる。バイトも週に1度に減らした。本当は期間限定でお休みをもらおうとも思ったのだけど、息抜きも必要かなと週1だけ入っている。ちなみに月曜日だけど、別に星倉さんに会いたいからとかでは……ない……と思いたい。
そもそも自分のやりたいことが何なのか分からない。周りのみんなは希望する業界や会社も決まっていて、目標に向かって動き出している。そんな中、何から手を付けたらいいのかすら分からない私は、ひとり焦っていた。
今日はお店でも星倉さんに、なんだか元気がないねと言われてしまった。そんなことないですよ!寝不足だからかなあと誤魔化しながら笑ったら、彼はすこし心配そうな、不服そうな顔をしたから、胸の中がざわざわとした。
心配なんて、しないでほしい。
元気がないことに気付いたりしないでほしい。
私の心には、絶対的なユージさんという人がいて、他の人には心を乱されたくなかった。いや、乱されてしまう自分のことも、嫌だった。
私が作り笑顔を返せば、星倉さんはそれ以上は詮索してこなかった。そういうところには、ちょっとだけ救われる。
『会えないダイヤより、会える石ころ!』
私に向かって言い放った親友の顔が浮かぶ。
そんなんじゃない。そんなんじゃないんだ。
星倉さんはドリンクを受け取ると、代わりにホットココアの缶をカウンターに置いて去っていった。
『風邪ひかないように。それから無理はしないように』
そう書かれた付箋がついた、あたたかい缶を。
そんなんじゃない。
すきなんかじゃない。
「それじゃあ早速、お便り紹介していきましょう」
いつも通り、ラジオからはユージさんの温かな声が聞こえてくる。
ユージさん。ユージさん。聞いてほしいことが、たくさんある。大丈夫って、言ってほしい。君なら出来るよって言ってほしい。今夜も私は電波の先へと思いを馳せる。
どうかどうか
自分が一体何者なのか。この難問のヒントを見つけ出せますように。
自分で見つけられる力が、私にもありますように。
ユージさんは相変わらずのイケメンっぷりで、番組も絶好調。星倉さんも変わらず、毎週月曜日の夜に来てくれている。たまにふたつ注文して、ひとつをくれることもあった。寡黙な人だと思い込んでいたけれど、心を開くと割と話すタイプらしく世間話も出来るようになった今、星倉さんと話すことは私の小さな楽しみになっているのも事実だ。
そんな私は、大学生の最大の関門──就活という時期を迎えている。
「みなさんこんばんは。今日も始まりましたミッドナイトスター!パーソナリティのDJユージです。さてさて、最近スーツ姿の若者をちらほらと見かけるようになりました。もう就活の時期なんですね。いやー、本当に1年早いです。就活生の皆さん、風邪に気をつけて頑張ってくださいね!」
最近は本当にそのことで頭を悩ませてばかりいる。バイトも週に1度に減らした。本当は期間限定でお休みをもらおうとも思ったのだけど、息抜きも必要かなと週1だけ入っている。ちなみに月曜日だけど、別に星倉さんに会いたいからとかでは……ない……と思いたい。
そもそも自分のやりたいことが何なのか分からない。周りのみんなは希望する業界や会社も決まっていて、目標に向かって動き出している。そんな中、何から手を付けたらいいのかすら分からない私は、ひとり焦っていた。
今日はお店でも星倉さんに、なんだか元気がないねと言われてしまった。そんなことないですよ!寝不足だからかなあと誤魔化しながら笑ったら、彼はすこし心配そうな、不服そうな顔をしたから、胸の中がざわざわとした。
心配なんて、しないでほしい。
元気がないことに気付いたりしないでほしい。
私の心には、絶対的なユージさんという人がいて、他の人には心を乱されたくなかった。いや、乱されてしまう自分のことも、嫌だった。
私が作り笑顔を返せば、星倉さんはそれ以上は詮索してこなかった。そういうところには、ちょっとだけ救われる。
『会えないダイヤより、会える石ころ!』
私に向かって言い放った親友の顔が浮かぶ。
そんなんじゃない。そんなんじゃないんだ。
星倉さんはドリンクを受け取ると、代わりにホットココアの缶をカウンターに置いて去っていった。
『風邪ひかないように。それから無理はしないように』
そう書かれた付箋がついた、あたたかい缶を。
そんなんじゃない。
すきなんかじゃない。
「それじゃあ早速、お便り紹介していきましょう」
いつも通り、ラジオからはユージさんの温かな声が聞こえてくる。
ユージさん。ユージさん。聞いてほしいことが、たくさんある。大丈夫って、言ってほしい。君なら出来るよって言ってほしい。今夜も私は電波の先へと思いを馳せる。
どうかどうか
自分が一体何者なのか。この難問のヒントを見つけ出せますように。
自分で見つけられる力が、私にもありますように。