「赤飯弁当ってことは、また読まれたの？」
　
　翌日、食堂でお弁当を広げていればサラダを片手に親友がそう言った。さすがは親友、行動パターンがばれているようだ。

「ユージさんもいいけどさぁ、リアルで出会いとかないの？」
「ない。ユージさんを越える人なんていない」
「会えないのに？顔わからないのに？」
「いいの！そんなことよりそっちはどうなのよ？」

　親友はそんな小うるさいことを言ってくるから、面倒くさくなって質問で返してやる。すると彼女は「実は……」と嬉しそうに口を開く。やっぱり、自分の話がしたかったのだろう。もう、それならそうと、最初から自分の話をしてくれたらいいのに。なんて思いつつも、親友の気持ちもよく分かった。私だって、ユージさんと会えて直接話すことができたらそれを自慢したくなる。こんな素敵な人がいて、こんな風に出会って、こんなこと言ってくれたよとか。脈絡もないし、オチだってないけど、それでもやっぱり話したい。それがきっと、恋というものだと思う。

「リア充大事だよ！リア充！」

　一通りの流れを話した後、親友は鼻息を荒くしながらそんなことを言う。その顔があまりに必死で思わず笑ってしまった。

　リア充……かぁ。

　頬杖をついて話を聞いていたら、ぽんっと星倉さんの顔が脳裏に浮かんで、私は慌てて頭を振った。なんでここで星倉さんが出てくるのだろうか。あの人はただの常連さんだ！私の心はユージさんのもの！……一方通行ですけど。
　確かに星倉さんは、ちょっとかっこよかった。目がしゅっとしていて口元もいい具合の大きさで、私の好みの顔ではある。
　だけど……！
　だけど、私の心にはユージさんがいるのだ！

「──ねえ聞いてる？」

　そんな親友の声で我に返る。

「もー！どうせまた、ユージさんのこと考えてたんでしょ」

　半分正解。半分は不正解。えへへと頭をかいてごまかした。まさかリアルで出会った人のことを考えていたなんて言ったら、彼女は大騒ぎするに決まっている。リア充万歳！って。
　そんなんじゃないんだ。私にとっては、ユージさんが絶対的存在なのだから。