「本当にかっこいい!DJユージ!」
「まぁたその話?へのへのもへじじゃん」
「これはただの似顔絵だから!」

 都内のとある大学カフェテリア。日差しの入る窓辺の席で私は親友と共にひとつのスマホを覗き込んでいる。

「カリスマラジオパーソナリティDJユージ、ねぇ」

 画面に映るのは、FMラジオ局BaysideKOKOの人気番組 “ミッドナイトスター”の公式ホームページだ。ミッドナイトスターは、毎週月曜深夜0時30分から放送されている1時間番組。この番組を進行しているのが、私も大ファンであるDJユージなのだ。
 優しい声に穏やかな話し方、興奮すると早口になるのが特徴で今最も勢いのある注目パーソナリティだ。彼の素性は謎のベールに包まれている。生年月日に出身地、本名にこれまでの経歴。もちろん顔だって非公開。局HPのパーソナリティ一覧ページには、ずらりと番組を持つ人々の顔写真が並ぶ中、DJユージの欄だけは子供が描いたような簡素なニコニコマークが彼の名前の上に載せられている。

「かっこいいかっこいいって言うけどさ、もしかしたら超おじいちゃんかもしれないじゃん」

 親友がレモンティーのパックに刺さったストローをちゅるると吸う。

「超おじいちゃんでもなんでも、ユージさんは絶対的な憧れなの!」

 スマホにうつるにこにこ笑顔を、私は人差し指でなぞって言った。