「少しでも寝てね」とユージさんから指定されたのは午後1時。もちろん寝ることなんて出来なくて、慌ただしく私は用意をして待ち合わせ場所へ向かった。まだ15分前だと言うのに、ユージさんはもうそこにいて私を見つけると笑顔を見せた。
「すみません、待たせちゃいましたか?」
小走りに駆け寄れば、彼は眉を下げた。
「すごくかわいいね」
そんな風にまっすぐに褒めらるなんて、慣れていなくて顔が一気に熱くなる。どうしよう、すごく嬉しい。この服にしてよかった、と今朝アドバイスをくれたカフェ子に心の中でお礼を言う。
「今日はさ、俺の行きたいところに付き合ってもらいたいんだけどいいかな」
ユージさんにそう言われ、どきどきしながら私は頷く。そんな固くならないでよ、仕事じゃないんだからと困ったように笑うユージさんに、はい、と硬い返事をすることしか出来なかった。
最初にユージさんが向かったのはお洒落な家具屋さんだった。ソファやダイニングテーブルなどから、食器やリビング雑貨までもが幅広く揃う最近人気のあるお店だ。「ニューヨークの冬って寒くてさ」とユージさんは暖かそうなスリッパをひょいと持ち上げながら言う。
「でもニューヨークのクリスマスとかって憧れます。海外ドラマとか見てると全然日本と違うんだもん」
クリスマスはまだ先なのに、もう店内にはツリーやサンタクロースのオーナメントがキラキラと光を放っていた。
「そうだね、ツリーとかもさ、でっかいのが街中の至る所にあるんだ。今度、見においで」
ユージさんの何気ない言葉に、顔はぽつっと熱を持つ。今度見においでだなんて、そんな簡単に行ける距離ではないし、そんな気軽に会いに行ける関係ではないのに。社交辞令だろうと言い聞かせては、だけどユージさんはそういう人じゃないともう一人の私が言う。本当に、いつか、行ってもいいのだろうか。クリスマスツリーを見に、ユージさんに会いに、アメリカへ行ってもいいのかな。
そんなことを考えていると、横にいたユージさんがふっと笑う。その視線の先を辿れば、そこには日本の冬の代表。こたつのセットが展示されていた。しっかりとカゴに入ったみかんまで。今年もこたつの時期がやって来ていたらしい。ふと、ラジオのリスナーさんのことが思い浮かんだ。
「キツネ太郎さんはもう出したかな」
ぼそりとユージさんがそう言ったから、私は思わずまじまじと彼の横顔を見つめて言う。
「今、同じこと考えてました」
やっぱり?と彼は笑うと、さすがにこたつは無理だなと昔ながらの湯たんぽを購入した。なんだか懐かしいでしょ?と。
お店を出ると、木枯らしがびゅうっとわたしのピアスを揺らす。足元を黄色いイチョウの葉がカラカラと滑るのを見て、ユージさんは寒い?とわたしに聞くから、素直に頷いた。
「何か飲もうか」
「それなら──」
私には一箇所だけ、どうしても彼を連れて行きたいところがあった。
「すみません、待たせちゃいましたか?」
小走りに駆け寄れば、彼は眉を下げた。
「すごくかわいいね」
そんな風にまっすぐに褒めらるなんて、慣れていなくて顔が一気に熱くなる。どうしよう、すごく嬉しい。この服にしてよかった、と今朝アドバイスをくれたカフェ子に心の中でお礼を言う。
「今日はさ、俺の行きたいところに付き合ってもらいたいんだけどいいかな」
ユージさんにそう言われ、どきどきしながら私は頷く。そんな固くならないでよ、仕事じゃないんだからと困ったように笑うユージさんに、はい、と硬い返事をすることしか出来なかった。
最初にユージさんが向かったのはお洒落な家具屋さんだった。ソファやダイニングテーブルなどから、食器やリビング雑貨までもが幅広く揃う最近人気のあるお店だ。「ニューヨークの冬って寒くてさ」とユージさんは暖かそうなスリッパをひょいと持ち上げながら言う。
「でもニューヨークのクリスマスとかって憧れます。海外ドラマとか見てると全然日本と違うんだもん」
クリスマスはまだ先なのに、もう店内にはツリーやサンタクロースのオーナメントがキラキラと光を放っていた。
「そうだね、ツリーとかもさ、でっかいのが街中の至る所にあるんだ。今度、見においで」
ユージさんの何気ない言葉に、顔はぽつっと熱を持つ。今度見においでだなんて、そんな簡単に行ける距離ではないし、そんな気軽に会いに行ける関係ではないのに。社交辞令だろうと言い聞かせては、だけどユージさんはそういう人じゃないともう一人の私が言う。本当に、いつか、行ってもいいのだろうか。クリスマスツリーを見に、ユージさんに会いに、アメリカへ行ってもいいのかな。
そんなことを考えていると、横にいたユージさんがふっと笑う。その視線の先を辿れば、そこには日本の冬の代表。こたつのセットが展示されていた。しっかりとカゴに入ったみかんまで。今年もこたつの時期がやって来ていたらしい。ふと、ラジオのリスナーさんのことが思い浮かんだ。
「キツネ太郎さんはもう出したかな」
ぼそりとユージさんがそう言ったから、私は思わずまじまじと彼の横顔を見つめて言う。
「今、同じこと考えてました」
やっぱり?と彼は笑うと、さすがにこたつは無理だなと昔ながらの湯たんぽを購入した。なんだか懐かしいでしょ?と。
お店を出ると、木枯らしがびゅうっとわたしのピアスを揺らす。足元を黄色いイチョウの葉がカラカラと滑るのを見て、ユージさんは寒い?とわたしに聞くから、素直に頷いた。
「何か飲もうか」
「それなら──」
私には一箇所だけ、どうしても彼を連れて行きたいところがあった。