今日は本当にツイてなかった。

 大学で講義を受けて、やっと慣れてきたバイトに行った。バイト先は、タピオカドリンクを扱う小さなジューススタンド。大きなターミナル駅から徒歩5分のところにある。カウンター内はとても狭く、一緒に入る人数は多くてもふたり。平日は一人でまわすことが出来るくらいのこぢんまりとしたスタンドだ。テイクアウトオンリーなので客席なんかはない。それでも常連さんが多いのがこの店の特徴で、彼女たちとの会話も楽しみのひとつだと気付いたのは、やっと仕事を覚えて余裕が持てるようになった最近のことだ。──とは言っても、作っている間に少し話すくらいだから、世間話程度ではあるのだけれど。
 それでも私自身話すことは好きだし、お客さんの色々な話を聞くのも楽しい。ユージさんのちょっとした言葉で選んだこの仕事だったけれど、接客も意外と向いているのかもしれない。
 そんな今日も、常連のお姉さんと楽しく会話をしながらドリンクを作っていた。

「私来年就活なんですよ」
「どんな仕事したいの?」
「なんかまあ適当に。受かった会社で適当に働いて寿退社、みたいな感じですかね~」

 求人情報がぎっしり詰まっていたアルバイト情報誌を思い出す。この世に仕事はごまんとある。特にやりたいことがあるわけでもないし、自己実現なんて言われてもぴんと来ない私には、そのくらいがちょうどいい。何かしらの仕事をして、なんとなく波長が合ったひとと結婚して、そのまま専業主婦になるのもいいかもしれない。この仕事も割と向いているから、パートで出戻りなんていうのもアリかもしれない。──その時までこの店がやっていればの話だけれど。

 そんな話をしていれば、「まだ?」と不機嫌な声がお姉さんの後ろから飛んできたのだ。