「みなさんこんばんは!月曜深夜いかがお過ごしですか?さあ、驚いた方々もたくさんいると思います。あの伝説番組が、生まれ変わって帰ってきました。新生ミッドナイトスターのはじまりです!」

 とうとう私が、自分の冠番組を持つ日がやって来た。とうとう私が、一人前のパーソナリティとして声を届ける日がやって来た。目の前のパソコンにはぴこんぴこんとメッセージがはじけていく。

「ラジオネーム、キラキラさん。
『タピ子さんおめでとう!!そしておかえりなさい!!この番組のヘビーリスナーだったタピ子ちゃんが、この番組で夢を見つけて、そしてここに帰ってくるなんて!本当に感動でしかありません。ユージさんはいないけれど、俺たちリスナーはここにいるよ。これから、新生ミッドナイトスター、楽しみにしています!』
 キラキラさんありがとう!私がこの番組のリスナーだった事は今じゃ有名な話ですもんね。ユージさんにはなれないですが、私なりに、私たちにしか出来ないミッドナイトスターをみなさんと作り上げていきたいです。本当にありがとうございます!彼女さんと仲良く聞いてくださいね!」

 生放送のチケットを譲ってくれたキラキラさん。一生懸命、カフェ子への一途な愛を貫き通したキラキラさん。今2人は仲良く聞いてくれているのだろう。

「続いて、ラジオネーム、赤いキツネ太郎さん。
『DJタピーおめでとう。俺をコタツ沼から救い出してくれたのは君でした。命の恩人です。ところで公開生放送はいつ?』
 ありがとうございます!あはは!コタツ沼!懐かしいです。そして唐突ですね、公開生放送なんて!まだ今日初回ですよ。でもいつか、私も公開生放送に出られたらいいなあ。がんばります!」

 あの日の公開生放送が脳裏に浮かぶ。ユージさんの姿を目にして本当に驚いて、戸惑ってしまって。体がいうことをきかなかったな。よろけてしまったとき、後ろで支えてくれた人がいた。あのひとも、リスナーとしてメッセージを読まれていた誰かだったのだろうか。ちゃんと話せばよかったなあ。

「続きまして、ラジオネーム器用すぎて困る犬身沢さん!
『タピーさん!おめでとう!おめでとうございます!本当に嬉しい!記念して新しいキャラクターのぬいぐるみをあとで局まで送りますね!あと鉄分大事なんで、プルーンの手作りジャムも送ります。これからもがんばってね!』
 わ~!ありがとうございます!犬見沢さん、本当に手先が器用ですよね?前にいただいたサシェが入っているぬいぐるみ、寝るときに一緒に寝てます。癒し効果があるの。本当にありがとう!」

 プルーンという単語に、懐かしい場面がよみがえった。これも生放送の時のことだ。倒れかけた私に、突然「プルーン食べますか!?」って言ってくれた人がいたっけ。なんであのひと、あんなところにプルーン持ってたんだろう。今思い出すとおかしくて滑稽で、くすくす笑いたくなってしまう。