「ひとつお願いがあります」
ミッドナイトスターの最終回──最後の生放送を終えた夜。局を出る直前に、ユージがお世話になりましたと頭をさげ、そのときに残したものがある。
「俺がアメリカに行ったあとは、この番組を──」
ついにこの約束を、果たせる日がきたのかもしれない。
「プロデューサー、お待たせしました。なんですか、折り入って話って」
「お、来たか。お前、そろそろひとつ番組もってみないか?」
えっと驚いたように顔を上げるのはADの来栖だ。脱サラをして、ディレクターになりたいと履歴書と身一つでここに乗り込んできたあの日の彼の姿を思い出す。年を重ねてからのアシスタント業務は心身ともにしんどいことも多かっただろう。それでも文句ひとつ言わず、頑張ってきたことを俺はずっと見てきた。
「……それって……」
「ディレクターやってみろ。新しい番組の」
ニヤリと笑って企画書を渡せば、彼は驚きと喜びで満ちた表情のままそれを受け取る。じっと読み込んで、それから信じられないという顔をした。
「もしかして……あのひとが、帰ってくるんですか……?」
大きな瞳をさらに見開く彼を見て、ふんと鼻で笑ってやる。
──さあ、伝説番組の復活だ。