夜、郡上踊りが始まった。

 江戸の頃より続くこの踊りは徹夜踊りとも呼ばれ、七月から九月の初めまで、毎日囃子の屋台が出てみなで踊りに参加する。

 馨は小さい頃に何回か参加したぐらいで、覚えている踊りもあれば、忘れている踊りもある。

 そこで地元の保存会の踊り手に二人で習ったのだが、

「まぁ観光客さんは馴れてないと大変ですからね」

 関西弁の馨は、どうやら観光客と間違われてしまったようであった。

 何種類かあるうち、馨が覚えていたのは「春駒」と「げんげんばらばら」で、「かわさき」はうろ覚えであった。