「それは、大丈夫です。それよりどうして?
アイツがあんなことを?」

美里さんは、不安そうに尋ねてきた。
本当ならその前に止めたかった。
だが犯人を決定付けるには、
犯行をしてもらわないといけなかった。
そうではないと警察は、動かない。
もちろん彼女に被害が及ぶなら
そんなの関係なくやめさせるつもりだったが。

「それは、プライドが許さなかったのだろう。
自分がフラれるのは許さない。
それが逆恨みとなり
君を苦しめようとしたのだろう」

「だって、浮気をしたのは、あちらですよ!?」

「人の憎しみは、時に理不尽な場合もある。
そして、これは犯人だという確かな証拠になる。
後は、彼を追い詰め罪を償わす」

自分の思い通りにならなかったとか
悪い状態になったのは、全てアイツのせいだと
理不尽な理由をつけて相手に押しつける事は、
この世の中めずらしくないことだ。
例えそれが、逆恨みだとしても関係ない。

人間の弱さは、時に間違った方向に行きやすい。
なら分からせるしかないのだ。
いかに自分の考えが愚かだと……。

「課長……?」

不安そうに俺の名を呼ぶまどか。
俺は、ニコッと笑う。
しばらくして警察の人達に帰ってもらった。

事情を話した所で信じてもらえないし、それに
彼は、まだ近くにいる。
美里さんから元カレの記憶を探りながら
居場所を確認した。

「よし、なら会いに行こうか?」

「誰に…ですか?」

まどかが聞いてきたので俺は、
振り向きながら
「美里さんの元カレに会いにだよ!」と答えた。

「元カレって!?
そんなの危ないですよ?」