分かってくれただろうか?
だがしかし彼女の心の中は、さらに
ドン引きされていた。あれ……?

いや、言ったら引かれると思ったし
それなりに覚悟はしていた。
見えない力を信じてもらうのは、簡単な事ではない。
しかし……人間ではないと言われる。

妄想の世界に入っているだの色々と怖いだの
とにかくかなり引かれてしまった。
こういう事を言われるのは慣れている。

実家がお寺だったこともあり
余計に変な誤解を受けやすかった。
非科学的だと否定もされやすいし
無理やりそれを押し付けようとも思わないけど
さすがにキツいな。

「たびたび失礼な奴だな?お前は。
まぁ、それが普通か。俺にとったら生まれつきだし
不思議でも何でもないけど
慣れない奴には…不気味に見えるかもな」

フッと過去のことを思いだし
切なそうに笑いかけた。
彼女は、そうではなくても怖がりだしな。すると

「あの…すみません。
私、失礼な事を言っちゃって
昔から怖い話とかダメで…その…」

彼女は、素直に謝ってきた。
俺の表情を見て罪悪感を抱く彼女は、
なかなか居ない存在で優しい。
他の奴なら気持ち悪いのは、気持ち悪いと
突き通されるから
なのに俺自身を否定するのを拒んでくれた。

「いや、謝らなくてもいいぞ?慣れてるし
それに形ないモノを信じられないのは、当然だ。
なら、信じてくれるまで待つだけだ。
それよりまどかは、優しいな。ありがとう」

ニコッと微笑んだ。
それだけでも救われると言うものだ。
さて、それも大切だが仕事をしないといけない。
営業もしっかりやらないと上司として
示しがつかない。

そう気持ちを切り替えようとしたその時
霊の気配がした。
これは、地縛霊というより浮遊霊の方か…?

探りながら辺りを見渡すと
あるマンションから幽霊の気配がする。
ここ…だな。

「あ、今日は…あそこのマンションから
営業しに行くぞ」

「あ、はい。」