「初めて1人で行ったのだから
仕方がないさ。よく頑張ったね」

しゅんと落ち込む私に逆に優しく労ってくれた。
申し訳ない気持ちになるが
そう言ってくれるとホッとした。

「それに今日は、友達と食事に行くんだろ?
なら仕事の事は、仕事で終わらせて
気にせずに楽しんでおいで」

ニコッと笑顔でそう言われた。
あ、見られちゃったんだ…あ、まさか
電話の内容まで知られていないわよね?
もし知られたら恥ずかしくなってしまうところだ。

私は、慌てて頭を下げると自分のデスクに戻った。
絶対に見られていませんよーに。
あぁ、恥ずかしい。
課長に心が読めるとなると気を付けないと。

そう思いながらデスクに座ると
パソコンを使い報告書を作成することにした。
恥ずかしさを誤魔化すために。

そして数時間後。仕事が終わると慌てて片付けて
待ち合わせをしていたイタリアンのお店に向かった。
すでに美里は、来ていて一杯始めていた。
私に気づくと美里が笑顔で手を振って教えてくれた。

「久しぶり~会えて嬉しいわ」

「私もよ。座って、座って。何にする?
聞きたい事がたくさんあるの」

美里がわくわくした表情で言ってきた。
何だか楽しんでいる様子だ。
もしかしなくても聞きたい事って課長のことかしら?
とりあえずメニューから料理を注文すると
ワインで乾杯する。

「で、どうなの?
課長とは、どこまで進んだのよ?」

「どこまでって…別に何も。
一緒に営業に行くぐらいだし」

やっぱり課長のことだった。
美里は、こういう話とか好きだからなぁ……。
何かあるとかそんな訳ないのに。

「え~何もないの?食事とかは?
まどかから誘えばいいのに」

美里は、不満そうに言ってきた。
私から誘って……。
そんな恥ずかしい事なんて言えないわよ。