あぁ、ダメだ。
抱き締めずにはいられない!!
「泣かなくてもいいよ。まどか
君は、何も悪くない。
だから君は、優しいんだ」
そう嬉しそうに微笑むと
思わず抱き締めてしまった。
泣かないでくれ……お願いだから
ひたすら自分の気持ちを誤魔化すのに必死だった。
その後、ゆいかちゃんを連れて自宅に帰った。
ゆいかちゃんは、ずっと黙ったまま
俺の手をギュッと握ってくれていた。
気持ちを察してくれたのだろう。
「ただいま」
『お帰りなさい。龍心ちゃん。
あら、どうしたの?なんか元気ないわね』
鈴木さんが気づいて声をかけてきた。
うん。ちょっとね……。
苦笑いすると背広を脱ぎ着替えた。
白装束に
『おい。その白装束って……お前。
滝でも打たれる気か!?』
清水さんが驚いた表情で言ってくる。
あぁ、ちょっと
久しぶりに打たれようかと思ってね。
『こんな時期に?まだ寒いじゃないのよ!?
もう少し暖かくなってからにした方が
いいわよ~風邪でもひいたら大変だわ』
鈴木さんは、慌てて止めてくれた。
ありがとう……。大丈夫。
ちょっと打たれるだけだから
じゃあ、行ってきます。
ニコッと微笑むと俺は、部屋から出ていく。
『大丈夫かしら?
何があったんじゃあ……?』
『あのね……お兄ちゃんがね…』
心配する鈴木さん達に
ゆいかちゃんが俺の代わりに説明してくれた。
その間に俺は、1人で滝に向かった。
山奥にある小さな滝の修行場だ。