俺の会った地縛霊の正体は、
中学生の女の子・佐野麻衣ちゃんだった。
黒髪を2つ結びをした大人しめの子だ。
死因は……飛び下り自殺。
3人の同級生に酷いイジメを受けていたらしい。
そのせいで彼女は、3人を憎いんでいた。
俺は、そんな彼女を救ってあげるために
イジメっ子に会わせることにしたのだが……それが
いい風になるとは、思えなかった。
むしろ悲しい結果になる事も見えていた。
でも、麻衣ちゃんの強い意志を止めることは、
俺には、出来なかった。
自分自身もこの力のせいでイジメにあった経験が
あったからだ。
自殺は、死んだ方も残された方も傷つく。
特にイジメなどで死なせてしまった親は、
それに対して気づいてあげられなかった事や
何もしてやれなかった自分への後悔を
ずっと抱え込まないといけない。
自殺を選んだ麻衣ちゃんみたいな人もそうだ。
本当は、死にたくなかった。
悔しかった。でも、それに耐えられないぐらいの
イジメを受け解放されたかった。
疲れたのだ……精神的にも
復讐だって本当は、したくないだろう。
でも、あの時の悔しさや怒りは、
耐えがたいものなのだ。
分かってくれないのなら、分からして
やりたくなるのも人間の心理なのだろう。
悲しい事に…。
俺は、そんな麻衣ちゃんをどうしても
救ってあげたかった。
どちらが正しいのか……俺でも分からない。
それでも止めるべきか……会わすべきか。
自分でも迷っていた。
とりあえずそのまま会社に戻り
実行に移したのは、学校や会社が終わる夕方にした。
その間、麻衣ちゃんは、ゆいかちゃんと一緒に
仕事を見学していた。
最初は、地縛霊の麻衣ちゃんに対して
怖がっていたゆいかちゃんだったが
怖くないと分かると懐ついていた。
麻衣ちゃんもまた、ゆいかちゃんを妹のように
可愛がってくれていた。
本当の彼女は、大人しくてとてもいい子なんだ。
イジメが無かったら、きっと
素敵な大人の女性になっていたかもしれない。
そう思うと切ない気持ちになった。
そして時間が経ち仕事を早く終わらせると
イジメっ子達が居る場所に向かった。
「どこに向かう気ですか?」
「この近くのカラオケ店に居るようだよ。
どうやら楽しくやっているようだな。
彼女がその子達のせいで亡くなったと言うのに…」
まどかが聞いてきたので俺は、
リップクリームを取り出しながらそう答えた。