課長の表情を見ると真剣そのものだった。
名前を呼ぶと課長は、背広を脱ぎ
カバンから長めの数珠を取り出していた。
「すまない。これを持っていてくれ」
カバンと背広を私に差し出してきた。
私は、慌てて受け取った。
そして課長は、そのままビルの中に入って行く。
しかし、何分か経っても戻って来ない。
何だか、ただならぬ雰囲気に不安になっていく。
「課長…大丈夫かしら?」
気になって仕方がない。
私も中に入って様子を見て来た方がいいのかしら?
でも、入るなと言われているし…。
それに不気味過ぎて近寄りたくない。
オロオロしていると課長がビルから出てきた。
あ、戻ってきた!!
「課長!。どうしたんですか!?」
私は、慌てて課長のもとに駆け寄って行く。
何だか酷く疲れている様子だった。
何があったのだろうか?
「あぁ、大丈夫。さすがに
手こずったけど、説得するのに時間がかかった」
「手こずった?
一体何があったのですか?」
「地縛霊だよ。
どうやらこのビルで自殺をしたらしい」
えぇっ?じ、自殺…!?
それってアレよね?
よく怖い話であるような自殺をして
悪霊になってまで復讐するヤツ。
恐怖でゾクゾクと背筋が凍ってしまった。
「まだ中学生ぐらいの女の子なんだけどね。
これは、ちょっと厄介かな。一度その子の自宅に
行こう。話は、そこからだ」
その子の自宅って……えぇっ!?
頭の中がパニックになる。
ちょっと待って。そんな急に言われても