良かったですね。想いが奥さんに伝わって。
奥さんは、今日にでも注文した指輪を取りに
行くつもりですよ。
あなたが、選んだ指輪を受け取りに
『い、言っておくけどな。
あんな小さな指輪ぐらいで喜ぶとか、どーかしている。
俺の気持ちは、あんな小さい石ころではないぞ!?
本当は、もっとデカイ石にしたかったんだが
アイツがケチで小遣いが少なかったから』
すると必死で言い訳をしていた。
えぇ、分かっていますよ。
それで宝石店で悩んでいましたもんね。
『宝石店もあんな小さな石ころに
どれだけ高くしていやがる。
俺の家内は、あんな小さい石ころより
大きく綺麗な石が似合う女だ。
俺の自慢なんだからな』
不満そうに言うご主人を見て
本当に奥さんの事を愛しているのだと分かった。
だけど、素直ではない性格だから
なかなか実行に移せなかっただけ……。
そうですね。
素敵な奥様ですし……。
『当たり前だ。きっと俺なんかより
相応しい男が居たかもしれないのに……アイツは、
ずっと俺についてきてくれた。ずっとな……』
そう話したご主人は、
とても切ない表情していた。
感謝と申し訳なさがあるのだろう。
彼らもまた、運命の出会いを果たし恋をした。
そして長く短い人生を一緒に歩んだのだ。
夫婦として
”あなた“だったからでしょう。
だから運命に逆らわずに一緒に歩めた。
きっと……来世も一緒になれるでしょう。
『来世か……アイツは、嫌がるかも知れないがな。
おい。それより……悪かったな。
色々と迷惑をかけて』
素直に謝ってくるご主人。
その身体は、ほとんど消えていた。
成仏まで……もう少し。
『アイツ……弥生にも伝えてくれ
“ありがとう。”ってな……頼んだぞ……若造』
最後のお経を唱え終わると
ロウソクの火がボッと高く燃え上がり消えて行った。
ご主人は、無事に成仏したのだった。
目を開けるとチラッと奥さんの方に向き直した。
「無事に成仏しました。
〝ありがとう。〟と感謝しておられました」
静かに微笑みながらご主人の気持ちを伝えた。
奥さんは、涙が溢れていた。
奥さんは、感謝とこれからの将来のために
契約を引き受けて下さった。
俺の役目も無事に終わる。
まるで運命の2人の行く末を見ている気分だ。
あんな素敵な夫婦になりたい……そう思える人逹だった。