俺が、この家を訪れたのは、
ご主人に呼ばれたからだ。

『頼む。誰でもいい……。
ワシの代わりに渡してくれ』

声は、年配の男性の声だった。
そうしたら一瞬だが記憶が流れてきた。
年配の夫婦の記憶が
かなりの想いが強いようだった。

話を聞こうと訪れたが最初は、奥さんに
信じてもらえなかったが住職としての立場と
千里眼の力を借りて何とか話を聞いてもらい
自宅の中に入れてもらった。
ここの主人である隆俊さんは、自分が見えることに
驚いていた。

『お前……俺が見えるのか?』

だから、さっきから
そう言っているではありませんか。ご主人。
俺は、心を通してご主人に話しかけた。

『……いや、まだ信用ならねぇな。
たまたま霊感がある詐欺師かもしれん』

まだ、疑っている……。
どうやら奥さんを信用させるより
ご主人の方を信用させる方が難しいかも知れないな。
彼は、昔で言う頑固親父だ。その辺は、
俺の父親に似ている。こういう人は、頭が固いから
俺は、やれやれと思いながら
仏壇に手を合わせご主人に話しかけた。

まだ、疑っているのですか?
俺をここに来たのは、
あなたが呼んだからですよ?ご主人

『はぁ?俺が何でお前らなんかを
呼ばないとならないんだ?呼んでいない』

誤魔化そうとするご主人。
呼んでいらっしゃいましたよ。
誰でもいいから何かを渡してほしいって……。
確かに聞こえた。強い想いと共に……。

『は、はぁっ?
俺、そんなこと言っていないぞ!?
勝手な事を言っているんじゃねぇーぞ。若造が』

図星を言われ怒り出した。おやおや
困ったものだ。映像からも分かったが、どうやら
相当の頑固親父らしい。
彼を説得しつつ奥さんに本音を言わすには、
一筋縄ではいかないな。

『おい。聞いているのか!?』