話を聞くこともなくブチッと切られてしまった。
あ、切られてしまったわ!?
保険のセールスは、嫌われやすい。
だから、契約を取るのもなかなか難しい。
そうしたら課長は、またすぐにインターホンを押した。
ちょっ……課長!?
そんな何度も鳴らしたら……。
『しつこいわね…何度来ても
契約なんてしないわよ!』
インターホンに出てくれたが
出て早々に怒鳴られてしまった。
だから言ったのに……。
「何度もすみません。旦那様…隆俊さんの事で
大事なお話がありまして」
『えっ?主人の事で?』
『私は、保険のセールス以外に
お寺の住職もしております。
ぜひお線香をあげさせて下さい」
課長は、堂々と自分の事を名乗っていた。
えっ?自ら住職に名乗ってもいいの?
しかし奥さんは、怪しんでいるが反応を示してくれた。
ドアを開けて覗いてきた。
50過ぎぐらいの綺麗な女性だった。
『住職…?』
「はい。ご主人様のやり残した事を伝えに。
おや?今日が結婚記念日でしたか。
おめでとうございます」
「な、何でそれを知っているの!?」
奥さんは、驚きを隠せないでいた。
そりゃあ、事情を知らない人から
見たらなかなか信じてもらえないだろう。
「はい。私には、霊感の他にあなた達の過去や
心の中が分かる〝千里眼〟を持っています。
ちなみに今朝は、寝坊しましたね?
娘さんは、会社に間に合ったようなので
安心して下さい」
「な、何故それを…!?」
「それが〝千里眼〟の力と言いたい所ですが
これは、ご主人様から今し方、直接聞いた話です。
近くに居られますよ。
ぜひご主人様にお線香をあげさせて頂けませんか?」
課長は、チラッと庭の方を見ていた。
あそこに…居るの!?
そう思うと背筋が凍った。
やっぱり、いざ幽霊だと思うと怖かった。