嘘…さっきまであんなに
ズシッと重たかったのに重くない。
むしろ数倍の軽さになっていた。
どうしてなの!?

「電車の人身事故の相手は、どうやら
無事だったみたいだな。
それより、立てないとなると…仕方がない」

課長は、そう言った瞬間
ひょいと私をお姫様抱っこしてきた。
キャア!!えっ…ちょっと!?

そして空いているデスクの椅子に移動すると
強引に座らされた。
驚いている私に課長は、ポンッと頭を撫でて
優しく微笑んでくれた。

「これで良し。
細かい事は、俺か先輩達に聞け」

「は、はい。」

私は、慌てて返事した。
わ、わぁっ…頭を撫でられちゃった。
しかもお姫様抱っこまでされて微笑まれちゃった。

心臓がドキドキッと高鳴り出す。
すると課長は、ニコッと笑うとそのまま
席に戻ってしまった。な、何だったのかしら?
動揺していると隣の席の女子社員が私に
声をかけてきた。

「ねぇねぇ。いいなぁ~あんなカッコいい
イケメン課長にお姫様抱っこされて。
あ、でも~幽霊とかそういう不思議ちゃん系って
私、苦手なんだよね。
イケメンだけに凄くざんね~ん 」

気さくに話しかけてくれるのは、嬉しいが
私に残念と言われても……困ってしまう。
それに誰?と思っているとその人は、それに
気づいたのか

「あ、私は、あなたと同じ新人の
日比野沙奈よ!」と自己紹介してきた。

「あ、はい。私は、長谷部まどかです」

「あぁ知っているわ。さっきも
あなたが来る前、新人の挨拶があったのだけど
なかなか来ないから心配をしていたの。
そうしたら課長が事情を話してくれたわよ!
だから遅刻するだろうって…不思議よね」

「……えっ?何故それを?」

スマホを忘れて連絡すら出来なかったのに
どうやって事情を?
もしかしてニュースで流れたのかしら?