「あぁ、一度見た人の目や記憶は、
インプットしているからね。
思い出せば、いつでも目を通して
新しい記憶を読み取れる」
凄い……。
思っていた以上に凄かった。
そんな事が本当に出来るのね?
これが〝千里眼〟の力なのか……。
人のために…なっているし
私には、そんな力が無いから不思議な気分だ。
信号に差し掛かると赤になったので
課長は、止まった。
「でもその力は、人によって毒にも薬にもなる。
いい使い方をすれば人のためになる薬になるが
間違った使い方をすれば猛毒になってしまう。
それに。これで知り過ぎる事は、時に
人を傷つけてしまうからね。難しいものだよ…」
そう話してくれた課長は、何だか
切なそうだった。昔、その力のせいで
傷つけた事があるのだろうか?
いや。課長は、優しいから
自分の方が傷ついていそう……。
「あ、今日は…このご自宅にしよう」
課長が二階建ての古い一軒家を
指差して言ってきた。
古風な感じが素敵な家だが何故だろうか?
「ココ……ですか?」
「どうやら、旦那様が最近事故で
亡くなられたようだね」
えっ?また、幽霊が呼ばれたの?
課長……。
私は、不安そうに課長を見つめる。
「大丈夫。悪い霊ではないから
どうやら俺達に頼み事をしたいらしい」
頼み事…?
何だか怖さと不安が私を襲う。
それでも課長は、構わずに背中をポンと叩くと
そのままインターホンを鳴らした。
『はい。』
「はじめまして
生命保険・フェニックスの西園寺と言います。
保険の事で説明をさせて頂こうと思いまして…」
『結構です!』