そうか……魔法の手か。
そうかも知れないね。
ゆいかちゃんの言葉に嬉しかった。
魔法の手ならこの力も悪くないのかも知れないな。
そう思っていると障子の戸が開き父さんが入ってきた。
「今日は、1件しか無いはずだが
遅くまで何処に行っていたんだ?うん?
その子供の霊は……何だ?」
ジロッと父さんは、こちらを睨み付けた。
ゆいかちゃんは、怖がりガタガタと震えながら
俺の後ろに隠れてしまった。
「遅くなってすみません。
ちょっと別の用で出掛けていました。
この子は、大切な預かり者です。ですので
あまり怖がらせないで下さい」
「預かり者だと……?
お前は、相変わらずそんな事をしているのか?
いい加減にさっさと成仏させろ。
お前は、無駄に優し過ぎる。そんな事をしても
霊のためにならんぞ」
丁重に説明するが父は、呆れたように叱ってきた。
霊のためにならないのは、分かっている。
それでも、彼女らの意思を無視は出来なかった。
生きていたら俺と同じ人なのだから
「……すみません」
「……お前は、霊に深入りする事が多過ぎる。
余計な邪念や情は、捨てろ。
住職としての務めは、保護ではない。
安らかに成仏させる事だ。それを忘れるな!」
父さんは、それだけ言うと部屋から出て行った。
……ごめん。怖がらせちゃったね?
ゆいかちゃんを見るとよほど怖かったのか
泣き出してしまった。
よしよしと頭を撫でて慰めた。
父の意見は、けして間違っている訳ではない。
確かに。霊を安らかに眠れるように成仏させるのが
住職としての務めだ。
むしろいつまでも成仏さない。俺の方が
間違っているのかも知れない。
俺のしてる事は……一体何だ?
自分でも不安になってくる。
『ちょっとーあれは、無いんじゃなーい!?』
すると勢いよく障子の戸をすり抜けて入ってきたのは、
鈴木さんだった。
驚いた……普段は、父さんが苦手でこちらに
近付いて来ないのに。