玄関まで行くとおやすみと言い
手を合わせ軽く頭を下げた。
彼女も真似して頭を下げてくれた。
「今日は、ありがとうございました。
おやすみなさい」
いいと思った事を素直に取り入れ
真似してくれるのは、彼女の長所だ。
嬉しいと思いながら背中を向け歩き出した。
しかし、肝心なゆいかちゃんが
ついて来ていないことに気づいた。
「ほら、早くおいで」
『う、うん。』
振り返ると来るように急かした。
ゆいかちゃんは、名残惜しそうに姉である
まどかを見るとこちらに歩いてきた。
亡くなってから初めて離れ離れになるのだ。
不安で仕方がないのだろう。
こちらに来ると手を繋ぎ夜道を歩いた。
ゆいかちゃんは、寂しそうにアパートを見た後
しゅんと落ち込みながら歩いていた。
初めての泊まりに知らない人とだから
不安になるのも仕方がない。それに怖いのだろう。
ゆいかちゃん。怖がらなくても大丈夫だよ。
俺の家は、お寺だけど君みたいな人達が居る。
いい人達だから親切にしてくれるよ。
ニコッと微笑んでみせた。
『同じ…人?幽霊なの?』
不安そうに、こちらを向くゆいかちゃん。
あぁ、そうか。同じ幽霊になったとしても
彼女の恐怖を取り除けた訳ではない。
霊感が、あるために幽霊に怯えていた彼女に
とったら今も変わらないか……。
一緒に居た霊達にも怯えていたぐらいだし。
幽霊だけど…凄い性格が明るい人達だから大丈夫。
まぁ、多少…いや。
かなり変わった人達だけどさ
お寺に戻った。部屋に行くと早々と
ゆいかちゃんを見て騒ぎ出す浮遊霊の鈴木さんだった。
『キャアー龍心ちゃん。誰?
その小さくて可愛らしい女の子は!?
ま、まさか…龍心ちゃんの隠し子!?』
『おい。そこのオカマ。
何で一緒に連れて来ただけで隠し子になるんだよ?
どう考えても何処からか拾ってきたんだろ』
同じ浮遊霊の清水さんは、呆れながら
そう言ってきた。