帰り道。私は、課長の背中を見ながら歩いた。
何だか不思議な出来事ばかりだ。
子供の霊がどうとか……色々あり過ぎて
頭の中がついていけない。
でも、とても切ない気持ちになった。
それに新しい契約も取る事が出来そうだし
これが課長が言っていた相手に
寄り添うって事なのだろうか?相手に…。
そう思うとまた胸がズキッと痛みだした。
何だか自分の過去を思い出した。
私も奥さんのようにスッキリとシコリが
取れる日が来るのだろうか?
ずっと抱えている後悔とか……。
「まどか。どうした?
ボーとして帰るぞ」
ハッと気づいた。いけない。
余計なことを考えてしまったわ。
私は、慌てて追いかけた。
課長と居ると不思議な事ばかり起きる。
でも、怖いけど…心底嫌になれないのは、
課長だからだろうか?
本当に不思議な人……。
心臓が高鳴っていた。
それは、怖いってより温かい気持ちだった。
よく分からない気持ちを抱えたまま
私達は、電車に乗り会社に戻ることにした。
「ただいま戻りました」
すると帰ってきた早々に
1人の中年の女性社員が泣きながらこちらに来た。
悔しそうな表情で……。
「課長~聞いて下さいよ!?
営業に行ったら客に凄い嫌味を言われたんです。
酷いんですよ。説明もろくに聞かずに
〝お前みたいなクズに
契約するような馬鹿な人間はいない。辞めろ〟って
私…この仕事に向いて無いのでしようか?」
そう相談を持ち掛けてきた。
これは、また酷い事を言われたものだ。
私でもかなり落ち込むかも……。
すると課長は、無言のまま
背広を脱ぐと自分のデスクに座った。
「いや…あれは、静恵さんが悪い訳ではない。
たまたまお客様の虫の居所が悪かっただけだ」
「虫の居所…ですか?」
「そう。静恵さんが来る少し前に
姑さんと言い争いをしていたみたいですよ?
で、その後にあなたが来たから
八つ当たりをされただけ。むしろ後で
帰って来る旦那様がさらに可哀相な事になるだろうね。
だから静恵さんが悪い訳ではない。
真面目で繊細だから余計に傷ついてしまったね。
俺の把握ミスだ…申し訳なかった」