「これは、どういう事だ!?
ちゃんと説明してくれ。西園寺さん」
父さんは、驚いていたし
麻白の父親も驚きながら説明を求めてきた。
俺は、黙ったまま立ち上がり彼女のもとに行く。
彼女を見て微笑むと父さん達に
「そういう事なので、
俺は…これで失礼します」と告げた。
「龍心。ちゃんと説明しろ!?
これは、どういう事なんだ?
こんな事をして水仙さんに失礼だぞ」
その怒鳴り声に身体を震わせるまどかだったが
俺は、彼女を庇うように立った。
そしてハッキリとした口調で告げた。
「失礼なのは、百も承知です。
俺は、自分の意志でこの縁談を断るつもりだ!」
「な、何だと!?」
「龍心お兄様…どうして!?
私の何が不満だと言うのですか?」
麻白は、納得がいかない様子だった。
俺を慕ってくれるのは、本当に嬉しかった。
だけど君の好意は、受け入れられない。
「麻白…ごめん。君に不満なんてない。
ただ俺には、彼女が必要なんだ。
彼女…まどかを愛している」
「馬鹿な事を言うんじゃない。
龍心。お前は、自分の立場を分かっているのか?
お前は、寺を継ぐ義務がある。
せっかくの縁談を断るだけでも許されないのに
強引に結納を壊す行為は、仏の冒涜と同じだぞ!?」
俺は、ピタッと止まった。
冒涜……か。
「冒涜……?仏にとって冒涜と言うのなら
互いに運命ではない者同士を強引に
結びつけようとするこの結納ではありませんか?
俺にとってまどか……彼女こそが運命の人だ。
その証拠に彼女のお腹には、
新しい生命が宿り俺達を導こうとしている」
彼女のお腹の中には、新しい命を宿し
産まれるのをまだかまだかと待っている。