「言ってくれないと分かりません。
多少の事なら、もう驚きませんから話して下さい」

課長に会ってから驚きの連続だ。
そのせいか少しなら免疫がついた気がする。
だから、多少の事なら驚かないつもりだ!
すると課長は、重い口を開いた。

「実は……まどかに会ったのは、もっと昔。
まだ、まどかが幼い頃にすでに出会っていたんだ」

「わ、私……覚えていません」

えっ?幼い頃って……いつだろうか?
まったく覚えていない。
まさか幼い頃に出会っていたなんて。

「君が覚えてなくて…当然だよ。
まだ君は、5歳ぐらいだったし
それに俺は、高校生で離れた所から
見かけただけだし」

えぇっ!?
そんなに幼い時にですか?
私は、さらに驚きを隠せなかった。
そうしたら徐に話始める課長だった。

「あれは……まだ、高校2年生の頃。
君は、母親に連れられて実家のお寺の当番に
来ていたんだ。俺も何か不思議な感覚がして
学校が終わると真っ直ぐ帰った。 
そして遠くからだけど、初めてまどかを見かけた。
君は、幼いし。まったく俺に気づきもしなかったけど
俺は、すぐに分かった。
君が俺の運命の人なんだって」

課長が……。
知らなかった。課長は、そんなに早くから
私を見つけてくれていたなんて
しかも、運命だと感じてくれていた。

「なら、何故もっと早く言ってくれたら
良かったのに」

早く言ってくれたら、こんなに悩まずに済んだし
早く結ばれたかも知れないのに…。

「まどか。俺もすぐにでも君に話しかけたかった。
しかし当時は……君は、5歳。
高校生の知らない男が運命だとか言い
近づいてきたら警戒されるのは当然だ。
特に親御さんが。
だから、話しかけたくても出来なかった」

課長の言葉に驚きながらも頷いてしまう。
確かに知らない大人のお兄さんに
運命だの何だのと言われても怖い。
変な人だと思ってしまうだろう。

「それに、分かっていたから
君と本当に会うのは、もっと先だって…だから
自分の気持ち抑えて見守る事にしたんだ。
成長して行く姿を遠くから見ていた」