私達は、そのまま近くのホテルに向かった。
こんな事をしたのは、生まれて初めてだったけど
とても幸せな気持ちになった。
やっと…心の底から繋がる事が出来たのだ。

こんな素敵なひとときはない。
すると薄れて行く意識の中で微かに声がした。
聞き取りにくい声で……。

『もう繋いだ手を離さないでね』

『早く会いたいなぁ~……と……に』

でも、私は……最後まで聞き取る事が出来なかった。
眠りについてしまったからだ。
次に目を覚ましたのは、
窓の日差しを浴びながらだった。
隣を見ると…一緒に眠りについた人の姿はなかった。

夢でも見ていたのだろうか?
ぼんやりする意識の中でそう思った。
都合の良過ぎる不思議な夢……。
寝ぼけながら重たい身体を起こす。
すると自分は、何も着ていないことに気づいた。
えっ?夢ではないの!?

そこで改めて自分の状況を理解する。
慌てて近くにあったバスローブを羽織った。
そして、立ち上がり窓の方を見ると
課長がバルコニーで座禅を組んでいた。
か、課長!?

やらり夢ではなかった。
微かに鈍い痛みもよりリアル感を増した。
恥ずかしくなっているが
しかし何で課長は、座禅を組んでいるの?
いや、課長は、住職様だ。
普通に考えたら何の不思議もない。

集中して身動き一つしない。
私に気づく気配はないし……。

「凄い…集中力」

ボソッとそう呟いた。
課長をジッと見つめながら
あったことを思い出していた。
私は、課長と愛し合ったのだ。
微かな痛みが何よりの証。

ううん…それよりも心の底から
幸せな気持ちになった。嬉しくていたずら心から
ソッと課長を驚かそうと窓を開けた。
フフッ……バレないように。

「まどか。起きたんだね?おはよう」

座禅を組んだ状態で私に話しかけてきた。
びっくりした…気づかれちゃった!?