翌日。彼女は、本当に体調を崩して
会社を休んだ。体調の事は心配だ。
俺は、仕事の合間を見て電話した。

勝ち負けではないけど
とにかく彼より先に電話をしたかった。
寝ているせいか、電話に出ない。
記憶を探っても寝ていた。
なら、せめて留守電を残す事にした。

『まどか?体調大丈夫か?
先日の事で…君を悩ませたのならすまない。
俺のせいだと反省している』

最初は、どうしても無難な会話に
なってしまった。
でも、本当に言うべきは……ここからだ!

『まどか。言い訳に聞こえるかも知れないけど
聞いてくれ。俺は、彼にヤキモチを妬いていた。
長谷川君の気持ちの事は、前から気づいていた。
君の事も……もっと前から知っていた。
だから、昔彼を待ち伏せして遠ざけた。
こんなの子供じみた嫉妬だと分かっているのに
我慢が出来なかったんだ。だから、お願いだ。
俺の手を……離さないでくれ』

ギリギリだったがメッセージを残す事は出来た。
ふぅ……とため息を吐いた。これでいい。
これ以上、彼女の記憶を覗くのは、やめよう。
全て決まるのは……この後だ。

俺は、ある賭けに出た。
千里眼を使わずに彼女をある場所で待つことだ。
もし何も手がかりがない状態で俺を見つける事が
出来たらこれこそ、仏様のお導きだろう。

しかし彼女が、あのまま
長谷川の所に残れば……きっぱりと諦める。
千里眼ばかり頼っていた俺のせめての
けじめと願掛けだ。

そして少しでも……不安になっている
彼女の気持ちを分かってあげたい。
知らないから理解が出来ないのなら
同じ目に遭うのが1番いい。
彼女の悲しみを分かってあげられるから

俺は、仕事が終わるとある場所に向かった。
向かった先は、彼女の実家近くにある公園。
ゆいかちゃんを成仏させた後に彼女と一緒に来た。
お互いに知っている場所だ。
彼女なら必ず俺を見つけてくれるはずだ。

仏様……お願いです。
俺と彼女にお導きを……。

同じベンチに座ってから
1時間が経とうとしていた。だが
まだ彼女は来ない。
一切千里眼を使っていないので
今、彼女は何処に居るのかも分からない。

すでにお店を出たのか?
それとも残っているのか?
こうなって初めて思い知らされた。
力を使わないとこんなにも不安になるのだと……。

当たり前のように、この能力を使い
生活をしていた。だけど、やめた途端
何も分からなくなり不安が俺を襲った。

今、何をしているのだろうか?
彼女は、何を想い誰を求めているのか?