「どうして?
乙女心が分かってないって事になるの?」

『だって、だってパパ。
あのお兄ちゃんに嫉妬しているんだもん。
で、ママに八つ当たり。
ママは、自信がないだけなのにさ~。
お寺だって知らないし千里眼持ってないのに。
パパ。全部言った気でいるけど肝心なこと
言わなさ過ぎ~。
も~だからママを不安にさせちゃうんだよ?』

「やっぱり……君達は、
千里眼を持っているんだね?」

道理で俺の気持ちを察する事が出来る訳だ。
いや、それよりも……肝心なことを言わないと言うが
気持ちを伝えたはずだ。
ハッキリと不安にさせないように……。

『……出来たの?
心が読めても不安にさせてるのに』

龍聖にそう言われた。
うっ……言い返せなかった。
確かに読めるのに不安にさせてしまった。

『彼……長谷川さんに昔会ったこと。
母さんとは、幼い頃にすでに出会っていたこと。
話さないと何も伝わらないよ。
母さんは、人の心が読めないのだから』

龍聖……。そうだ。
俺は、まだ何も伝えていない。
彼女に話していなかった。

『もう……お別れの時間だ。
母さんの事なら僕達も手伝ってあげるから
気持ちを……ちゃんと伝えなよ』

『ママは、パパが大好きだよ!
パパは、ママにいっぱい好きだって言ってあげてね。
早く……してね』

心愛の声でハッとする。すると
資料室だった。また、あの夢……?
いや、違う。あれは、俺達の子供だ。
彼の言葉が心に染みる。

そうだ。大切な事を言わなかったから
いけなかったんだ。伝えなくちゃあ……。
俺は、立ち上がると資料室から出て部署に戻った。
しかしまどかは、体調を崩して
早退すると伝言を日比野さんに教えてもらった。

まどか……。
自分のデスクに戻ると深いため息を吐いた。
それでも彼女に会いたい。
想いが強いほど……会いたい思う気持ちは強くなる。
するとある記憶が見えた。

長谷川が、彼女を食事に誘う気だと
これは……最終警告なのだろう。
彼は、彼女にプロポーズをする気だ。

どちらを選ぶかは、すべてお互いにかかってくる。
そしてそれを決めるのは、彼女次第。
俺も……覚悟を決める時だ!!