お手洗いにある鏡を見てみると
不安そうな表情をしている自分の顔が映った。
どう見てもプロポーズを受けた人の顔には見えない。

「酷い顔……」

よく見ると目の下に隈が出来ていた。
最近、寝不足と悩みでストレスが溜まっていたからだ。
自分の顔を確かめながらため息を吐いた。
改めて美人に生まれたかったと思った。
そんなことを思っても無理な話だけど…。

そうしたら、もう少し課長とも
前向きに接する事が出来たかも知れないのに。
どうしたらいいのだろう。
長谷川君にきちんと返事をしないといけないのに
まだ気持ちは揺らいで決められない。
自分でもどうしたらいいのか分からない。

私は、メイクを直そうとカバンから
化粧ポーチを取り出そうとした。
するとポロッと誤ってスマホを落としてしまった。
あっ!!

慌ててスマホを拾った。
どうしよう…割れてないかな?
確かめるが、ヒビも入ってないし無事だった。
良かった……。

中身もちゃんと起動しているか
確めるため電源を入れた。すると
不思議な事が起きる。着信履歴の画面になっていた。
そこには、課長の名前が表示されていた。

ドクッと大きく心臓が高鳴り出した。
そういえば……。
私は、思い出し着信履歴から課長の留守電を探した。

あった…。
私が聞かずにそのままにしていた留守電番号。
怒ってたり、悲しい内容だったら嫌で聞けなかった。
でも、さっきから心の中はザワザワと
胸騒ぎがしていた。

早く聞けと言われているような気がしてならない。
これを聞けば何かが変わるのだろうか?
それとも……後悔する?怖い。
なのに震える手は、そんな私の意思と真逆に
留守電の再生ボタンを押そうとした。
聞きたいのだと思う。
心の中では……課長の声が聞きたい。

再生ボタンを押すと耳につけた。
すると留守電のアナウンスが流れた。
接続されると課長の声が聞こえてきた。

『まどか?体調大丈夫か?
先日の事で…君を悩ませたのならすまない。
俺のせいだと反省している』

えっ?それは、違う!!
課長の留守電は、怒りとかではなく謝罪だった。
あなたが全て悪い訳ではないのに。すると
そのまま話し続けてきた。

『まどか。言い訳に聞こえるかも知れないけど
聞いてくれ。俺は、彼にヤキモチを妬いていた。
長谷川君の気持ちの事は、前から気づいていた。
君の事も……もっと前から知っていた。
だから昔。彼を待ち伏せして遠ざけた。
こんなの子供じみた嫉妬だと分かっているのに
我慢が出来なかったんだ。だから、お願いだ。
俺の手を……離さないでくれ』

そう言った瞬間。
時間切れになってしまい通話が切れてしまった。
私は、携帯を耳につけたままボー然と
立ち尽くしていた。
課長は、長谷川君の事を前から知っていた?

いや、それよりも私の事を前から
知っていたと言っていたわ。
それに…ヤキモチって!?