『あんまり私達を待たせないでね?
待ちくたびれちゃうと…余所に行っちゃうから
なーんちゃって』
心愛ちゃんは、クスクスと笑いながら言う。
すると周りがうっすらとぼやけていく。
意識が薄れて行く。
えっ?ちょっと…待って!!
しかしハッと目を開けると自分の部屋だった。
「あれ……?夢……?」
起き上がり周りを見渡すが誰も居ない。
不思議な夢を見てしまったわ。
何だったのだろう…?あの子達は。
意味あり気に話していた。
「繋いだ手を離さないでか…」
自分の手を見ながらそう呟いた。
私の手は、誰を握ったらいいのだろうか?
誰を愛したらいいのだろうか?
ベッドからおりるとキッチンに行き
コップに水道水を注き入れた。
一気に飲み干すとハァッ…とため息を吐いた。
また、ベッドに戻ろうとしたら
テーブルに置いてあるスマホに目が行く。
着信のランプが鳴っていた。
思わず手に取り見てみると課長からだった。
課長……。
ズキッと胸が痛み出した。
目を逸らすようにスクロールして行くと
数回来ている課長の下に知らない番号が載っていた。
「知らない番号?あれ…でも
何処から見たことがある番号のような?」
留守電になっていたので聞いてみる事にする。
ピッとボタンを押すと
『よう。長谷川だ。急だけど今日の夜空いているか?
良かったら食事でもどうだ?
居酒屋の『カナリヤ』に19時に待っているから
気が向いたら来てほしい。じゃあな』
それだけ言うと留守電が切れた。
長谷川君だった。
彼は、私をずっと気にしてくれてた。