私は、課長と顔を合わせられず
逃げ出してしまった。胸は、ズキズキッと痛み出す。
このままだとダメだと分かっているけど
今の私には、何も出来ない。

1人トボトボと街中を歩いていた。
ハァッ…どうしよう。
ため息を吐きながら会社の近くにあるベンチに座った。

営業と言って出てきたが
これでは、ただのサボりになってしまう。
課長と両思いになったはずだった。
でも、麻白さんの言葉に胸が刺さるような
思いがした。

自分が同じ立場と考えると…頭が真っ白になった。
だから、素直に喜べない自分が居た。
あんな風に言われたら……。

『頭を冷やしてもう少し考えさせて下さい。
課長と付き合うどうか…』

課長にそんや事を言ってしまった。
本当は、そんな事を言いたい訳ではないのに…。
せっかく、課長と両思いになれたのに
自分から考えさせて欲しいって一体
何様なのだろうか?私の馬鹿……。

これが自分に自信がある人や
恋愛経験の豊富な人だったら、もっと
堂々としていたのかも知れない。
しかし私は…麻白さんに勝てるようなものが
何も持っていない。

だから余計に信じられなかった。
ダメだ……余計に落ち込んでしまう。
頬を叩き気合いを入れ直した。
頑張らなくちゃあ……仕事は、仕事。
プライベートを持ち込んだらダメよ!
すると、その時だった。

「あれ?長谷部……だよな?
俺だよ!俺……長谷川」

「えっ?長谷川君!?」

「やっぱり。久しぶり……まさか
こんな時に会うなんてな」

声をかけられた方向を向くと何処かで見たことがある
男性が立っていた。一瞬誰だったかな?と思ったら
長谷川君だった。
彼は、小中学生頃の同級生だった。
つまり私の体質を知っている人物だ。
私は、思わず立ち上がった。

ど…どうしよう。
私は、彼にあまりいい印象を受けなかった。
むしろ悪いぐらいだ。何故なら昔…。