「来世は、もっと素敵な出会いがしたいわ。
今の主人デブだから…痩せた状態で」
どうやらそれぞれ不満があるようだ。
それも無理はない。一緒に居れば
不満も出てくるものだ。俺は、クスッと笑った。
「まぁ、皆さんの言いたい事は、大体分かります。
次は、違う人と希望される方も居るでしょう。
しかし残念な事に来世では、その気持ちすら
覚えていません。生まれ変わる時
前世の記憶を全て消され新たな生命となり誕生します」
「今の旦那様の事も忘れ…次会う時は、
初めましてとなってしまいます。
ですが、何か不思議に感じませんでしたか?
初めて会ったのに…どこか懐かしい感覚。
それは、前世に会っていたからかも知れません」
何度生まれ変わっても、惹かれ合う魂。
それこそ運命の赤い糸に導かれるように
また、お互い恋に落ちる。例え前世で何かあっても
記憶のどこかで捜し求めているのかも知れない。
「ですが、運命の人と言われても
ピンと来ない人も居るでしょう。
そういうのを感じ取れる方なら問題ないのですが
全員がそうとは限りません。
目に見える訳ではありませんからね。
分かれば…どんなに助かる事やら」
目に見えないものを信じるのは、難しい事です。
時に、この人だと想い…違う人を選んでしまう人。
近くに居るのに今まで気づけなかった人。
そしてまだ、出会っていない人。
離婚や別れる原因になってしまった人は、
もしかして相手を間違えたからかも知れませんね?」
人には、いろんな出会い方がある。
遅かれ早かれの違いに過ぎない。
もちろん俺は、まどかなのだが……。
皆、夢中で聞いてくれた。
彼女もまた夢中に聞いていた。
「しかし、それは…異性ばかりではありません。
友人、家族、そしてここに居る皆さんも
前世で出会っている可能性があるのですよ?
記憶に無いだけで、もしかしたら何かしら
縁がありこうやってまた出会った。
これもまた、運命であり仏のお導きなのかも
知れません。時に出会いたくないと思う人と
出会うかも知れません。
嫉妬や妬みなど…色々あるでしょう。ですが、
あなたに出会った事は、奇跡であり必然。
憎むのではなく感謝して許してあげて下さい。
あなたにとって…それが来世のいい出会いになるように」
「これで俺の講演会を終わりたいと思います。
今日は、皆様。お寺の掃除にお越しくださり
ありがとうございました。
帰りは、気をつけて帰って下さいね」
ニコッと笑顔で言うと頭を下げた。
たくさんの拍手をしてもらえた。
講演会は、無事に終わった。
「ありがとうございました」
「龍心君。素敵な話だったわ。
また、聞きに来るわね」
檀家さん達は、帰って行く。
1人1人に挨拶をしながら見送った。