『おい、龍心。彼女の……。
まどかって子を忘れてるなよ!?
寂しそうにお前を見てたぞ』
『そうよ。複雑な気持ちは、分かるけど
彼女を蔑ろにしたらダメじゃない』と
言って俺に注意してきた。
ハッと思いまどかを捜した。しまった!!
自分の気持ちを隠すのに必死で
彼女の事を蔑ろにしてしまった!?
何処にも居ない……。
『彼女なら台所の所に行ったわよ!』
「ありがとう。すぐに迎えに行くよ」
台所か。俺は、慌てて彼女が居る台所に向かった。
まどかは、お昼に食べるちらし寿司の準備を
手伝っていた。
良かった……帰ったのではなくて
ホッと胸を撫で下ろした。
「居た居た。まどか
姿が見えなくなったから捜したよ」
「まぁ、龍心さんの彼女さんだったの?」
まどかに声をかけると
年配の女性達が俺とまどかの関係を尋ねてきた。
それは、押し寄せるように。
この状況に彼女は、戸惑っていた。
「おっ…と。皆さん落ち着いて下さい。
彼女は、俺の部下ですよ。
だからあまり騒がないようにお願いしますね。
今日は、お手伝いに来て頂いているだけなので
さぁ、準備ができ次第、お昼に致しましょう。
まどかは、用があるのでこちらに」
ニコッと微笑みながら指示を出すと
俺は、まどかを連れて台所から出て行く。
廊下を歩いているとまずいな。余計にまどかと
気まずい雰囲気になってしまった。
早く誤解を解かないと……。
足を止め振り返える。
「まどか。誤解をしないで欲しい。あれは、
騒ぎを止めるためにワザと言ったんだ。
けして本心ではない」
「だけど…私は、課長の部下なのは…本当だし」
誤解ないように訴えてみるが
切なそうに彼女は答えた。違う……。
すると向こうから麻白の声が聞こえてきた。