「龍心。お前…まさか。
また、お祖母様の所に行ったのか!?」
えっ?行けなかったのだろうか?
不安そうに課長を見つめる。
するとこちらを気づきクスッと微笑んだ。
そしてお父様を見るとハッキリした口調で答えた。
「はい。行きましたが。それが何か?」
「お前…何度も言っているだろ!?
お祖母様の所には、無闇に近づくなと」
「えぇ、分かっています。ですが
今日は…母の命日。
俺が唯一、母さんと話せる日だ!」
課長は、真剣な目でそう言った。
もしかしなくてもお祖母様に会う事も
お母様に会うのもいけない事なのかしら?
私は、不安になりながら2人を見ていた。
「いいか?龍心。成仏した死者を口寄せし
話するのを許されるのは、イタコである
お祖母様だけだ。それを母親に会いたいがために
利用するんじゃない」
「利用と言わないで下さい。
お祖母様も年に一度ならいいと言ってくれている。
母さんだって…会うのを楽しみにしてくれてます」
「俺が言いたいのは、そういう事ではない。
お前が…」
お父様は、言葉を詰まらせた。
何を言いかけたのだろうか?
すると課長は、切なそうな表情する。
「分かっているよ。父さん。
あと少しだけだから……」
そう言うと先に本堂に入ってしまった。
慌てて呼び止めようとすると麻白さんが
私より先に課長を追いかけてしまった。
ポツリと取り残されてしまう。
オロオロしながらチラッとお父様を見る。
そうしたら切なそうな表情していた。
お父様……?
「お前は、行かなくてもいいのか?」
「あの…いいのですか?
課長…息子さんのこと…」
「心配いらん。いつもの事だ!
それにアイツも大人だ。いちいち言葉などいらん」
そう言うと行ってしまった。
本当にいいのだろうか?
私は、心配そうにお父様の後ろ姿を
ジッと見つめていた。