「俺は、成仏が出来ていない霊を具体化に
出来る程度だけど、お祖母様は違う。
成仏をしてしまった霊すら呼び寄せる事も出来る。
それがイタコの力だ!」

「成仏をした霊まで…!?」

えぇっ!?それって普通に考えたら
かなり凄い事じゃない。
成仏をしてしまった霊まで…ってことは、
つまり霊と呼べるものは、何でも呼び寄せるって事よね?

「いや、何でもと言っても
呼び寄せては、いけない者も居る。
それは、すでに新しい生命として生まれ変わってしまった者だ」

お祖母様は、そう言ってきた。
新しい生命として生まれ変わった者?
どういう事だろうか?

「そう。新しい生命となった者は、
前世の記憶を全て無くし新しい人生を歩んでいる。
それを我々が呼び寄せて前世の記憶を呼び覚ますと
現在の記憶と混ざり合い混乱を生む。
それを防ぐために生まれ変わった魂は、
呼び寄せるのを禁じている」

私は、その言葉に驚いた。
だが確かに言われてみればそうかも…。
前世の記憶が自分の中で思い出しだとしても
困るだけだ。むしろ自分は、
誰なのか分からなくなるかも……。
そう思うと禁止にしてもらった方がいい。

「母は、成仏しているがまだ生まれ変わっていない。
それに今日は、母の命日なんだ」

「えぇっ?お、お母様の命日ですか!?」

あまりの衝撃の言葉に大声になってしまった。
それって…とても大切な日ではないか。
いいのかしら?そんな大切な日に私が
立ち会っても?

「この日だけは、毎年お祖母様に
母を呼び出してもらい会話するのを許されている。
俺は、幼い頃からこれを楽しみにしていた。
今回は、ぜひ君に参加して欲しかったんだ」

課長は、切なそうに真っ直ぐと私の目を見た。
特別な日。するとお祖母様がジャラッと課長の同じ
数珠を手に持った。

「龍心。時間が無いのだろう?
そろそろ始めるとするよ」

「は、はい。お願いします。
まどか。邪魔になるから少し離れよう」

そう言い私と一緒に少し離れた場所で見守る。
お祖母様は、大きな数珠を擦り合わせ
お経を唱え始めた。
課長と違い何だか迫力があって怖い。
思わず課長の後ろに隠れてしまう。