ガーン!!
いくらなんでも、平凡で地味って
酷い言い方をしなくても
彼女の言葉にさらにショックを受けた。

「とりあえず自己紹介を致しますわ。
私は、水仙麻白(すいせんましろ)
龍心お兄様とは、幼い頃から
私の婚約者として決めていましたの。
だから、龍心お兄様目当てならやめて頂けますか?」

なっ!?やめるも何もまだ課長とは、
そんな関係ではないし。そもそも何で
こんなにライバル視されているのだろうか?
彼女から一方的に言われて唖然とした。

「こら、麻白。まどかに
失礼な言い方をするんじゃない!?」

課長が間に入って止めてくれた。
私は、戸惑いながら課長を見つめる。

「まぁ、失礼な言い方なんてしていませんわ。
龍心お兄様ったら酷い。
私が、こんなにもお慕い申し上げていましたのに」

泣きながら課長に抱き付いていた。
慌てる課長だがしかし彼女は、やめない。
ひ、酷い。課長に婚約者が居るのにも
ショックなのに……目の前で抱き合うなんて

「し、失礼しました」

その光景に見ていられず私は、
そのまま駆け出して逃げてしまう。
課長が慌てて私の名を呼んでいたが
無視してしまった。

長い階段をおりるが途中で立ち止まった。
すると涙がポロポロと溢れ出してきた。
自分は、何を勘違いしていたのだろうか?

お寺は、掃除のお手伝いをするために
誘われているだけであって
変な期待をしてしまうなんて。
帰ろう…こんな姿を課長や周りに見せられない。

また階段をおりようとする。すると上の方から
「まどか!!」と呼ぶ声が聞こえてきた。

えっ?
振り向くと課長は、階段の所まで来ていた。

「課長……?」

まさか、課長が追いかけてくれるとは
思わなかったから驚いてしまった。
でも、会わせる顔がない。
慌てて背中を向けた。涙を拭きながら