「そうだ。麻白お嬢さんが、お前の婚約者だ!」
麻白さんの発言に課長は、困惑していると
課長と同じ袈裟を着ており
坊主で背の高い中年男性がそう言ってきた。
「父さん!?」
えっ?課長のお父様!?
私は、課長のお父様だと聞いて驚いてしまった。
厳格そうな雰囲気で課長と真逆だった。
何より怖そうだ。
似ていないって事は、母親似なのかしら?
いやいや、そんな事を思っている場合ではない。
この麻白って女性が婚約者って
どういう事なの!?
頭の中が真っ白になった。そんな……。
「父さん。言ったはずですよね?
俺の結婚相手は、自分で決めるって」
「お前こそ、まだ分かっていないのか?
お前は、生まれながら仏の力を持ち
この寺を継ぐ宿命にある。
なら、そんな訳の分からない女より
麻白お嬢様のような方を妻として嫁いで貰うべきだ」
課長は、慌てて言い返すが
お父様は、聞く耳を持たなかった。
むしろ宿命だと叱る一方だ。
「それは、横暴って言うものだ。
俺は、寺を継ぐつもりだが、だからと言って
相手を勝手に決めないでもらいたい」
「何が横暴だ!?普通に考えても
私の言っている方が正しいだろーが!!
麻白お嬢様に何が不満だと言うのだ?
あの水仙寺の娘さんで名家のお嬢様だぞ。
これ以上のない条件ではないか」
水仙寺って……。
全国の中でも有名なお寺じゃない!?
そんな凄いお寺の人が課長の婚約者に……?
あまりにも衝撃とショックで
頭の中は、ついていけなかった。
2人の言い争う内容も耳に入らないぐらい
ただボー然と立ち尽くしていると麻白さんが
私をジロジロと見てきた。
「あの…何でしようか?」
「あなたが、龍心お兄様がおっしゃっていた人?
いや、そんな訳はありませんわよね。
いくらなんでも、こんな平凡で地味な方が
龍心お兄様の心を射止めたなんて思えませんもの」