「フフっ…柴山さんは、今でも十分若いですよ?
立候補なんて勿体ない言葉です」
「あらあら。も~龍心君ったら。
相変わらず口が上手いのだから
褒めても何もあげられないわよ?」
そう言いながら笑い合っていた。
何だ…この様子だと冗談か。
てっきり、本気なのかと勘違いしちゃった。
ただの社交辞令だったのね。
デートやキスまでしちゃったから
変に意識をしてしまっている。
恥ずかしい…。でも、勘違いと分かった時
胸が突き刺さるような痛い気持ちになった。
私は、課長の事が好きだから
しゅんと落ち込む。だがしかし
そんな私にさらに追い討ちをかける事が起きた。
向こうから課長の名を呼ぶ声が聞こえてきた。
「あ、居ましたわ。龍心お兄様~」
えっ?龍心…お兄様?
振り向くと黒髪のロングヘヤーを綺麗になびかせた
着物姿の美女が居るではないか。
うわぁ~まるで日本人形みたい。
「麻白!?君も来ていたのか?」
課長は、驚いた表情で言ってきた。
えっ?知り合い?こんな綺麗な女性と……。
すると彼女は、課長に思いっきり抱き付いてきた。
えぇっ!?ちょっと……。
「当たり前ではありませんか。
麻白は、龍心お兄様の婚約者なのですから」
はい!?私は、唖然とした。
か、課長に……婚約者!?
思わない発言にうろたえている私に
課長は、ため息を吐くと彼女を剥がした。
「まどか落ち着け。それに麻白
昔にも言っただろ?
君とは、婚約出来ないって」
えっ?そうなの…?
しかし彼女は、負けじと言い返してきた。
「そんな事ありませんわ。麻白は、幼い頃から
龍心お兄様のお嫁になるって決めていましたの。
だから諦めませんわ」