そうか…ゆいかが居たから。ゆいか…。
寂しそうに呟くと課長がギュッと抱き締めてくれた。
ドキッと心臓がさらに高鳴る。

「か、課長…?」

私は、驚いしまった。
どうして抱き締めてくれるの?

「まどか。あった事は、全て大切な事だ。
出会いもお別れも…全て。
だからその気持ちを大切にして欲しい」

「……はい。」

涙が溢れてくる。課長は、温かい人だ。
そして優しい。すると泣く私のまぶたやおでこに
キスをしてくれた。
驚いて課長を見るとニコッと微笑んでくれる。
そのまま唇に甘いキスをしてくれた。

どうしてキスをしてくれたのか分からない。
ただ私は、その身を任せた。

しばらくすると課長が
「さて、そろそろ帰るよ。
女性の自宅に長いするものではないから」と
言い立ち上がった。

えっ?帰っちゃうの?
突然立ち上がった課長に驚いてしまう。

「えっ…帰るのですか?」

「うん。もう遅いからね。
それとも…泊まってほしいかい?」

ニコッと笑顔で言われる。身体中が熱くなる。
と、泊まりだなんて…恥ずかしい。
すると課長は、クスクスと笑ってきた。

「フフッ…冗談だよ!
まぁ、ちゃんと道理を守らないといけないからね。
じゃあ、今日会えて良かった。おやすみ」

「は、はい。おやすみなさい」

私は、ボー然としたまま返事する。
結局課長は、そのまま帰ってしまった。
な、何だったのだろうか?
それに課長が、私に…き、キスをしてきたわ。

思わないキスに動揺してしまう。
だって、こんなの部下とやる訳がない。
だとしたら…何で?
課長の気持ちが分からなくなってしまう。
手で唇に触れる。まだ、感触が残っていた。
甘いキスの味が……。