えっ!?どうして課長を嫌うのだろうか?
こんなに優しい人なのに。

『同期だからかな。俺…能力の事もあって
他の人と比べて営業成績が良くてね。
だから余計にライバルとして意識されたみたいだ。
一度彼女に“何で上を目指さないの?
本気ではないくせに霊力だとか
意味の分からないことを言って人を馬鹿にしてる”と
怒鳴られてしまって』

『いや。俺が悪いのだけどね。
手を抜いているつもりも
馬鹿にしているつもりもなかった。
ただ本職もあるから上を目指すと責任があるし
やりにくくてね。
それが返って彼女の逆鱗に触れてしまった』

課長は、そう言ってきた。
私は、驚きで言葉を無くした。
それは、酷いと思った。
課長には、住職という大切な仕事がある。
だから仕方がない事だし

こちらの仕事だって手を抜いているなんて
思ったことはない。
むしろ部下思いで面倒みだっていい。
こんな私でも、いつも気にかけてくれるし
周りの信頼も厚いのに……。

「そ、そんなことはありません。
私や周りの皆さんも課長の事を信頼しています。
だから私だって……」

私だって少しは、課長の役に立ちたいと
思ったぐらいだ。
それに信頼だってしている。

『フフッ…ありがとう。
やっぱりまどかは、優しいな』

課長は、電話越しでそんな事を言ってきた。
でも、それだと私が気遣って言っているようにも
聞こえてくる。
社交辞令みたいだと誤解されてしまう。

「あの…別に。気遣って言っている訳では
ありませんからね?私は……ただ」

『……うん。分かっている。
まどかの事なら全て』

えっ……?
思わずドキッと高鳴った。
私の全てって…どこまでのことを?

「課長……?」

『なぁ、今から会わないか?
まどかの顔が見たいんだ……』と
色っぽく囁くように言ってきた。