「あ、ありがとうございます!」
まどかは、嬉しそうにお礼に言ってくれた。
父さんが聞いたら甘いと言われて
叱られるかも知れないけど……。
でも、最期だから大切にしてほしい。
「じゃあ成仏するのは、まどかの実家でいいね?
まぁ、どのみち。君の自宅は、俺の寺の檀家だからね。
都合はいいだろう」
すると「えっ!?」という顔をされる。
やっぱり。そうだろうとは、思っていたけど
完全に忘れ去られていた。
小さい頃は、お寺に来てくれた事もあったのだけどな。
その時に俺は、君を見つける事が出来たのに。
仕方がないとはいえちょっと悲しい。
「あの……申し訳ありません。
全然気づかなくて……」
彼女は、何度も頭を下げてきた。クスッと笑う。
まぁ、仕方がないよな。
こればかりは……彼女も必死に謝ってくれているし
幼かったし。
「まぁ、気づかないのも無理はないよ。
ほとんど父が出席していたし
何処の寺も似たようなものだから知らない人達も
多いからね。もういいから。それよりも
俺は、帰るけどゆいかちゃんは、置いて行くから
姉妹同士仲良く過ごすといい。
ゆいかちゃんもそれでいいかい?」
『うん。お兄ちゃんありがとう』
ゆいかちゃんに聞くと嬉しそうに笑うと
返事をしてくれた。
そして俺は、彼女の自宅を後にした。
歩いて帰る際に振り返った。
遠くから見えるアパートを見ていると
何だか寂しい気持ちになった。
この気持ちは、何故だろうか……?
胸が締め付けられそうに痛く感じた。
自宅に帰ると鈴木さんと清水さんが
迎えてくれた。
『龍心ちゃん。お帰りなさ~い!!
大丈夫?』
何故だか心配してくれた。
ただいま。えっ?何で大丈夫なんだ?
鈴木さんの言葉に驚かされた。