『こっち。こっちだよ!おじちゃん。
僕は、ここに居るよ。503号室』
いや、だからおじちゃんじゃないって……。
どうやら俺に気づいて呼んでいるらしい。
男の子の言われた通り503号室に行くと
躊躇せずにチャイムを鳴らした。
すると30代前半ぐらいの女性が出てきた。
声の男の子の母親だ。
「はい。どちら様ですか?」
「はじめまして。私達、生命保険
〝フェニックス〟から来ました。西園寺と言います」
社員証を見せながら言う。
これがないと詐欺だと勘違いをされてしまうからだ。
彼女も慌てて社員証を見せる。しかし
「保険ですか…すみませんがウチは、
入る気なんてありませんから」
アッサリと断られてしまう。
まぁ、そうだろうね。
奥さんの足元を見ると隠れていた
5歳ぐらいの男の子がひょっこりと顔を出した。
あ、居た。この子か…さっきから
俺を呼んだ子は。
するとパッと表情が明るくなった男の子。
『ねぇ、おじちゃん。僕が見えるんでしょ?
僕ね。爽太って言うの』と自己紹介をしてくれた。
どうやら人懐っこい子らしい。
「そう言わずに話でも聞いて頂けると嬉しいのですが
おや?可愛い息子さんですね。
5歳ぐらい…ですか?」
「えっ!?な、何をおっしゃっているのですか?
あなたは…」
奥さんは、驚いていた。まどかも……。
そして奥さんは、怪訝そうな表情で俺達を見てきた。
かなり疑われ、そして亡くなった息子を言われて
不愉快に思われたのだろう。
まぁ見えない人には、理解されるのは難しい。
「おや?あなたのそばに居るでは、
ありませんか…これぐらいの背をした男の子。
名前は…〝爽太〟君って言うんですね」