如月の手勢は後方に大将を控えさせ、セオリー通りに里の入り口から城に通じる一本道を攻め上がってきた。

 騎馬を先頭に、大方が槍を手にした雑兵だ。森に囲まれた石段の上り口まで石動からの攻撃がなかったのを、待ち伏せを警戒したのか一旦その足が止まった。

 久住ら斬り込み隊は上り口付近と中腹付近の二手に別れ、待ち受けている。
 久住と無月は先発で倒木のトラップを仕掛けるタイミングを図り、ある程度の如月の戦力を潰してそのまま本陣を叩きにかかる。
 漏らした手勢は、後続の支癸達が先発を追いがてら潰せるだけ潰し、残りは城で片を付ける。
 一撃必殺の短期決戦。数で圧倒的に劣る夜見が生き残る術はそれしかない。


 そして如月が石段に突入を開始した。
 怒号と轟音。
 城にもそれははっきりと届いていた。

「始まったねぇ。若ダンナにはとりあえず、城門前で一暴れしてもらおうか。押されるフリで中庭までお客を案内してくれりゃ上出来」

「ああ」

「火薬玉の投げ入れは呼笛で合図するから聞き逃すなよ? 巻き込まれるなんてベタな真似は、勘弁して」

 遊佐の軽口はいつも通りだが、目は笑っていない。
 氷凪も無言で頷く。

「おおよそ始末したら、門は閉鎖して残党狩りだ。オレはそのまま隊長達を追うから、城は若ダンナに任す。咲乃ちゃんも居ることだしね」

 軽はずみな行動に出るな、と遊佐はしっかり釘を刺すことも忘れない。
 自ら討って出たいだろう氷凪の心情も解っているが、何を於いても主の安全確保が最優先事項だった。

「さて・・・と、じゃあ気合い入れて征ってみよーか!」