ほどなくして如月勢を追尾していた鳥使いの夏目も帰還し、その時がいよいよ目前に迫った。

「あと半時ほどで里の入り口に到達するかと」

 獣道を伝い、先回りで戻った彼女を氷凪が労う。

「ご苦労だったな。おかげで出来る限りの手は尽くせた。礼を言う」

 夏目は黙礼を返し久住の横に控える。本来在るべき場所に戻り、あらたな闘志を秘めて。

「氷凪、そろそろこちらも配置に付いた方がいい」

 無月の言葉に氷凪は肯く。

 夜見の面々を前に、いく分引き締まった眼差しで一同を見渡し、広間に凛とした声が響いた。

「如月が誰に踊らされていようと、敵なら討つだけだ。戦力を潰せればそれでいい。生き死には構うな、時間の無駄だ。・・・いいな、生きる為の戦いをしろ。不利な時は退け。誰一人欠けることなく終わらせる。必ず・・・!」

 オォッ、と力強い声が広間中に沸いた。

 倍近くの敵を相手にすると言うのに、士気は衰えることなど知らない。これまでの〝夜見〟としての経験と実績が、おのおのに勝機を確信させているのだろう。
 氷凪の後を引き取って無月が続けた。

「では征こうか。斬り込み隊は城門前に集合、迎撃隊は中庭で遊佐の指示を待て。久住」

 目線で促され久住は夜見の総領として一言、付け加えた。

「これが済んだら、盛大に打ち上げだ。夏目にもサービスさせるからな、しくじるなよ? 一生、お目にはかかれねぇぞ」