それは何も日本人に限ったことではない。世界各国の有名なお祭りには、全世界から見物人が押し寄せる。私のバケットリストにも、『リオのカーニバルとヴェネツィア・カーニバルを現地で見る』が入っている。

「なら、〝まつり〟の語源は知っているか?」
「神を(まつ)ることですよね」

祖父母に育てられた私はこの手のトリビアに強い。

「ああ、そして、その儀式のことも指す」

だが、天地さんはちょっと不機嫌だ。私が知っていたからだろう。

「だから、七夕伝説発祥の地には七夕に由来した神社や〝天の川〟と名の付く川が多々ある」

「ちょっといいですか?」と小さく挙手(きょしゅ)する。

「話の流れから神社があるのは分かりますが、川がどうして関係するんですか?」
「ほうほう、知りたいか?」

私が知らないのが嬉しいのか嬉々としている。

「なら、教えてやろう」

コホンと咳払いをすると天地さんは、「大昔は自然を神として(あが)(たてまつ)っていたからだ」と言って偉そうに腕を組み()()った。

「ああ、山の神、海の神、川の神、っていうそれですね」

なるほどと私も頷く。

「多くの神社は歴史が古く、深い森や林に囲まれているので未知なる場所には多くの謎や物が遺されている」
「あぁぁぁ! それが考古学に繋がるんですね?」
「ようやく分かったか、アホーめ」

慣れたくないが……彼のアホには少し慣れてきた。