「おはようございます。明けましておめでとうございます。本年も宜しくお願い致します」
花菜がダイニングへ行くと、頼人と敦子が既に起きていた。
「お! 明けましておめでとう。今年もよろしくね」
「明けましておめでとう。今年もよろしくね。まだ寝てても良かったのよ?」
「何だかすっきりと目が覚めてしまったので、起きちゃいました。お二人はお出かけですか?」
花菜は二人の服装を見て出かけることが分かった。その問いかけに敦子が上機嫌で答える。
「ふふふ。私たちはね、毎年元旦は二人で初売りに行くのよ」
「初売りですか。良い物に巡り会うといいですね」
うちのママは元旦からパワフルだよね、と言って、頼人は明るく苦笑した。本当に二人は仲の良い夫婦だと思う。
「今日は息子たちと三人で留守番になるわね。まだ足が痛むでしょうし、ゆっくりしててちょうだいね」
花菜は返事をするとキッチンへ向かい、自分の朝食の準備を始めた。
「おはよう。そろそろ電車の時間だよね。車の準備をしてくるよ」
「あ、敬也、お願いね」
花菜がおせちを皿へ取り分けていると、敬也が起きてきたようだった。
「花菜ちゃん、明けましておめでとう。今年もよろしくね」
「はい、明けましておめでとうございます。今年もよろしく願いします。朝ごはんの用意はどうする?」
「駅まで二人を送ってくるだけだから、用意しておいてもらえると嬉しいな」
花菜は笑顔で返すと、皿をもう一人分、棚から出して持ってきた。
ふと、敦大はまだ寝ているのだろうかと考えてしまう。
昨日、雅喜へ返事をしてから敦大と顔を合わせていなかった。
彼は友人たちと夜遅くまで会っていたので、夕食時にも居なかったのだ。
どうしてこんなに気になるのだろうかと、花菜は頭の中でぼんやりと思う。
行ってきます、と敦子たちの声が聞こえてきて、彼女ははっと我に返った。
「じゃあ僕、ちょっと送ってくるから」
「うん、気を付けてね」
三人が外へ出て行くと、賑やかだった空間が静かになった。ダイニングからテレビの音が、小さいのにはっきりと聞こえる。
頭の中が、またぼんやりと敦大に切り替わった。そんな自分にぽつりと呟きがもれる。
「やっぱり私、おかしい……」
「何がおかしいの?」