土曜日、19時

「お疲れ様でしたー」

「お疲れ様、晴輝くん」

スタッフルームで携帯を見た晴輝は厨房に声をかける

「俺食って帰るんでハンバーグ定食お願いします」

「わかったー」

五時から拝んで七時には終わらないよな、酒も入るだろうし

晴輝がホールに出ると

「晴輝くんお客さん」

亜美が立っていた

「晴輝くんご飯出来たよ」

「ありがとうございます」

晴輝は奥の席に座った

亜美もついていってアイスクリームを頼む

「俺、会いたくないって言ったよな」

熱々のハンバーグを頬張りながら亜美に言う

「相変わらずハンバーグ好きなんだね」

「……はあ」

「同級生なんだから会ってもいいじゃん、彼女がいるわけでもないんだし」

ん?ということは彼女がいれば来ないのか?祐介が言ってたのはこういうことか?

「去年も夏くらいに電話してきたよな」

「うん、拒否られたけど、夏が来ると晴輝のこと思い出すんだよね……後悔してるから……ごめんね二年前」

「もう遅せえよ」

「元には戻れないのかな?」

「無理だな」

「雨愛さんがいるから?でも彼女じゃないんでしょ?」

「彼女じゃないけど俺は雨愛が好きなんだよ、亜美のことはもう好きじゃない」

「雨愛さんも晴輝のこと好きっていってた」

「知ってる……」

「晴輝モテるから彼女いるかと思ってたんだよね、私、雨愛さんに彼女じゃないなら積極的に行くからって言ったの、何も言い返さなかったけどあんな大人しい子のどこが好きなの?」

「お前は知らなくていい……もし、俺と会った時に彼女いるっていってたらどう思った?」

「やっぱりいるのかーって……でも雨愛さんならちょっと頑張っちゃうかも、四年付き合ったんだよ私のほうが晴輝のことわかってるよ」

「俺のことわかってないから浮気するんだろ?俺の家が母さんいないの知ってたじゃん、理由も……」

「……ごめんなさい」

晴輝の母親は浮気が原因で家を出ていったと父親から聞いていた

晴輝は母親の記憶がほとんどなく、父親の葬儀に来ても只の弔問者として扱った

晴輝はご飯を食べ終えて食器を厨房に運んだ

亜美のアイスクリームと自分の食事のお金を払い店を出る

亜美は晴輝の後ろをついて歩いていく

「帰れよ」

「暇だし家誰もいないし、ねえ、家に来る?」

「いかねえよ、もう思い出したくない」

「じゃあ晴輝んちでする?」

「しないから帰れ」

「一人で寝るの寂しいでしょ」

「寂しくないし、お前と寝るつもりもない」