うちは私立の高校なのだが、不良やヤンキーというたぐいの生徒は一人もおらず、素行の悪い生徒もほとんどいないという大変珍しい学校だ。
その中で、石野さんは目立つ存在だった。
僕は石野さんとはクラスが違うから直接は知らないし、噂しか知らない。
石野さんは2年生の時にうちの高校に転入してきた。どこから転入してきたのかなぜか誰も知らない。
身長170センチ近くあり、切れ長の目、鼻も高く、薄い小さな唇の美人顔にギャルメイクをしていて、手足の長いモデルのようなスタイル、腰まである髪を明るいブラウンに染め、制服は着ているものの膝上20センチの短いスカートという目立つ格好で転校初日に登校してきたらしい。
これはあくまでも噂だが、髪の毛を染めてることやスカートの長さ、メイクの濃さは校則違反だろうと先生の間で問題になったそうだ。
だが、うちの高校は自由な校風というのを売りにしていて、もともと素行の悪い生徒がこれまでいなかったこともあり、校則が曖昧で身なりについては「高校生らしい身なりをすること」となっているだけだった。
職員会議では、高校によっては私服OKのところもあるのだから膝上20センチのスカートだから高校生らしくないとも言えないし、髪を染めている高校生もいるので、髪を染めているから高校生らしくないとも言えないし、メイクもうちの高校でも薄くだがしている子もいるので、どこまでのメイクをしたら校則違反になるという基準も決めにくいということになっていったたようだ。
それなら、校則を変えたらどうかという意見も出たらしいが、石野さんを狙い撃ちするような校則変更はまずいのではないかということと、これもあくまでも噂だが、石野さんの転入には理事長が関係しているということで、黙認になったということを聞いたことがある。
結局、石野さんにはなんの注意もなかったようだ。
その後も、石野さんの格好は変わることもなく、授業態度や生活態度もあまりよくないのでクラスの中でも浮いた存在だという噂だ。
その石野さんに図書当番をしてくれというのはなかなかハードルが高い。
「私も担任の先生を通じて、委員会や当番に出るように言ってもらったはずなんだけど……ひょっとしたら、うまく伝わってないかもしれないから、同じ3年生の人で、誰か石野さんに説明に行ってくれないかしら。3年生の人で石野さんと親しい人はいない?」
司書の先生が3年生の顔を見回す。
石野さんと親しい人は3年生はおろかこの学校中を探してもなかなかいないだろう。男関係が派手だと言う噂もあるから、ひょっとしたら男子の中には知り合いがいるかもと思ったが、誰も名乗りを上げない。
「委員長がいいと思います」
突然、3年生の女子が声を出した。
「そうね。委員長も3年生なんだから、委員長が適任だとおもいます」
「賛成」
僕以外の3年生の全員が賛成の声を上げている。
みんなの視線が僕に集中した。
「えっ、僕?」
僕は石野さんのことをまったく知らない。当然喋ったこともない。遠くから見たことはあるが、背の高い子だなと思っただけだ。
いや、一度だけすれ違ったか。チイちゃんのマンションで。
だが、ただそれだけだ。
そんな僕が行って石野さんが話を聞いてくれるだろうか。
だが、みんなが僕に押し付けようとしているのは明らかだ。
それも相手が石野さんなら仕方がないか。
それに僕は委員長だ。当然の役目だろう。
「分かりました。でも、当番に来てもらえるかどうかわかりませんよ」
話しに行けと言われれば行くが、ちゃんと当番にきてくれるかどうかの責任は持てない。
「それは仕方ないわ。とにかく言ってみて。もし、だめなら担任の先生と話をして、委員を他の人に変えてもらうことも考えてもらうわ」
「はい。わかりました」
しかし、本当に今日はついていない。
明日、あの石野さんと話さなければいかないかと思うと、気が重い。
その中で、石野さんは目立つ存在だった。
僕は石野さんとはクラスが違うから直接は知らないし、噂しか知らない。
石野さんは2年生の時にうちの高校に転入してきた。どこから転入してきたのかなぜか誰も知らない。
身長170センチ近くあり、切れ長の目、鼻も高く、薄い小さな唇の美人顔にギャルメイクをしていて、手足の長いモデルのようなスタイル、腰まである髪を明るいブラウンに染め、制服は着ているものの膝上20センチの短いスカートという目立つ格好で転校初日に登校してきたらしい。
これはあくまでも噂だが、髪の毛を染めてることやスカートの長さ、メイクの濃さは校則違反だろうと先生の間で問題になったそうだ。
だが、うちの高校は自由な校風というのを売りにしていて、もともと素行の悪い生徒がこれまでいなかったこともあり、校則が曖昧で身なりについては「高校生らしい身なりをすること」となっているだけだった。
職員会議では、高校によっては私服OKのところもあるのだから膝上20センチのスカートだから高校生らしくないとも言えないし、髪を染めている高校生もいるので、髪を染めているから高校生らしくないとも言えないし、メイクもうちの高校でも薄くだがしている子もいるので、どこまでのメイクをしたら校則違反になるという基準も決めにくいということになっていったたようだ。
それなら、校則を変えたらどうかという意見も出たらしいが、石野さんを狙い撃ちするような校則変更はまずいのではないかということと、これもあくまでも噂だが、石野さんの転入には理事長が関係しているということで、黙認になったということを聞いたことがある。
結局、石野さんにはなんの注意もなかったようだ。
その後も、石野さんの格好は変わることもなく、授業態度や生活態度もあまりよくないのでクラスの中でも浮いた存在だという噂だ。
その石野さんに図書当番をしてくれというのはなかなかハードルが高い。
「私も担任の先生を通じて、委員会や当番に出るように言ってもらったはずなんだけど……ひょっとしたら、うまく伝わってないかもしれないから、同じ3年生の人で、誰か石野さんに説明に行ってくれないかしら。3年生の人で石野さんと親しい人はいない?」
司書の先生が3年生の顔を見回す。
石野さんと親しい人は3年生はおろかこの学校中を探してもなかなかいないだろう。男関係が派手だと言う噂もあるから、ひょっとしたら男子の中には知り合いがいるかもと思ったが、誰も名乗りを上げない。
「委員長がいいと思います」
突然、3年生の女子が声を出した。
「そうね。委員長も3年生なんだから、委員長が適任だとおもいます」
「賛成」
僕以外の3年生の全員が賛成の声を上げている。
みんなの視線が僕に集中した。
「えっ、僕?」
僕は石野さんのことをまったく知らない。当然喋ったこともない。遠くから見たことはあるが、背の高い子だなと思っただけだ。
いや、一度だけすれ違ったか。チイちゃんのマンションで。
だが、ただそれだけだ。
そんな僕が行って石野さんが話を聞いてくれるだろうか。
だが、みんなが僕に押し付けようとしているのは明らかだ。
それも相手が石野さんなら仕方がないか。
それに僕は委員長だ。当然の役目だろう。
「分かりました。でも、当番に来てもらえるかどうかわかりませんよ」
話しに行けと言われれば行くが、ちゃんと当番にきてくれるかどうかの責任は持てない。
「それは仕方ないわ。とにかく言ってみて。もし、だめなら担任の先生と話をして、委員を他の人に変えてもらうことも考えてもらうわ」
「はい。わかりました」
しかし、本当に今日はついていない。
明日、あの石野さんと話さなければいかないかと思うと、気が重い。