有馬というところには初めて来たが、ずいぶん山の上の方にあるんだなと思った。新神戸駅からだいぶ登っていく。
「はい。着きました」
運転手さんに言われ、お金を払おうとすると、
「これで」
と言って、樹里がカードを差し出した。
「僕が……」
「いいの。これでお願いします」
結局、樹里が払ってくれた。
僕は先に降りて、キャリーバッグを受け取ろうとタクシーのトランクの方に歩き出した。
「どこ行くのよ? 手を貸しなさいよ!!」
樹里が大声で僕を呼ぶ。
慌てて樹里のところに行って降りるのに手を貸した。
樹里はタクシーから降りると、僕をほっておいてホテルの方へと歩いていく。
運転手さんからキャリーバッグを受け取り、さっさと歩いていく樹里の後を追いかけた。
ホテルの玄関を入るとフロントがあり、その前に紀夫が待っていた。
「やっと来たか。待ちくたびれたよ。早くチェックインの手続きしろよ」
紀夫は疲れたような顔をしている。
「なんか疲れた顔しているな」
チェックインの手続きをして、樹里と紀夫のところに戻る。
「ああ。もう2回も温泉に入ってるからな」
それは疲れるわ。
「真紀はどこ?」
樹里が周りを見回す。
「部屋で寝てるんじゃないかな」
紀夫が渡辺さんに電話した。
「隆司たち来たよ。うん、うん。今から上がるよ……待ってるって。行こう」
エレベーターに乗り、部屋のある5階で下りる。
「俺と隆司はこっちで。石野は向かいだ」
樹里たちの部屋は僕たちの向かいみたいだ。
樹里がノックすると、ドアが開き、渡辺さんが顔を出す。
「入って」
「うん。隆司、カバン」
キャリーバッグを樹里に渡す。
樹里はバッグを引っ張って部屋の中に入っていった。
「あれ石野のカバンだったのか?」
「そう」
「お前は召使いか?」
それに近いかも。
部屋に入って、荷物の片付けが終わると、夕ご飯を食べに行こうという話になった。
樹里たちを誘ってレストランへ下りていく。
「今日の夕食は親父に頼んで奮発してもらった。夕食代分は親父が持つから心配するな」
「どうして山崎君のお父さんが私たちの分まで出してくれるの?」
樹里が紀夫を見る。
「俺にカノジョができた祝いだそうだ」
紀夫も僕同様一人っ子だ。よほど紀夫のことが可愛いんだろうな。
それにしても持つべきものは金持ちの友達だ。
たしかに食事は豪華だった。
胡麻豆腐にエビや野菜の天ぷら、鯛やマグロなどのお刺身三種盛り、神戸牛のサーロインステーキ、山菜ご飯に最後はシャーベットまで出てきた。
「フウー、もうお腹いっぱい」
渡辺さんが満足そうに言う。
「ホント。もうこれ以上はいらない」
樹里がお腹を撫でている。
「これからどうする?」
紀夫がみんなの顔を見回した。
「僕は温泉に入るよ。まだ入ってないし」
「わたしもそうするわ」
「樹里が入るなら、わたしも入るわ」
「えっ、また入るの? もう3回目だぜ。大丈夫か?」
紀夫が心配そうに渡辺さんの顔を見る。
「大丈夫よ。せっかく温泉に来たんだから」
渡辺さんは言い張った。
「まあいいけど。俺は部屋にいるよ」
紀夫は仕方なさそうに言った。
僕は着替えの用意をすると、樹里に電話した。
「用意できたけど」
温泉は大浴場になっている。僕は場所を知らないので渡辺さんに連れ行ってもらおうと思った。
「もうちょっと待って。用意できたら電話する」
「わかった」
電話待っていると10分ぐらいしてかかってきた。
「いいよ」
廊下に出ると、樹里と渡辺さんが立っていた。
「行きましょう」
渡辺さんが先に立って歩く。
1階のフロントの奥に大浴場があった。
もちろん男湯と女湯は分かれているので、入り口の前で樹里たちと別れた。
「後でね」
「先に帰っちゃダメよ。わたしたちが出てくるまで待ってなさいよ」
樹里が睨んでくる。
「わかってるよ」
樹里に手を振って浴場に入った。
5分ぐらい浸かって洗い場に上がるということを3回ほど繰り返して、もう限界と思い浴場を出て着替えを済ませ、廊下に出る。
女の人はお風呂が長いからまだいないかと思ったが、渡辺さんが立っていた。
「樹里はまだよ」
「待ってるよ」
待ってないと確実に怒られる。
「樹里、アメリカへ行くんだってね」
渡辺さんは窺うように僕を見た。
「そうみたい」
他に言いようがない。
「平気なの?」
「仕方ないよ」
「そう」
僕にはどうすることもできない。
2人とも押し黙っていると樹里が出てきた。
「何よ。2人とも暗いわね。隆司、散歩に行こう」
樹里が僕の腕を取る。
「真紀はどうする?」
「紀夫を呼んでお土産でも見てるわ」
「わかった。じゃあね」
樹里と僕はホテルの建物を出た。
「はい。着きました」
運転手さんに言われ、お金を払おうとすると、
「これで」
と言って、樹里がカードを差し出した。
「僕が……」
「いいの。これでお願いします」
結局、樹里が払ってくれた。
僕は先に降りて、キャリーバッグを受け取ろうとタクシーのトランクの方に歩き出した。
「どこ行くのよ? 手を貸しなさいよ!!」
樹里が大声で僕を呼ぶ。
慌てて樹里のところに行って降りるのに手を貸した。
樹里はタクシーから降りると、僕をほっておいてホテルの方へと歩いていく。
運転手さんからキャリーバッグを受け取り、さっさと歩いていく樹里の後を追いかけた。
ホテルの玄関を入るとフロントがあり、その前に紀夫が待っていた。
「やっと来たか。待ちくたびれたよ。早くチェックインの手続きしろよ」
紀夫は疲れたような顔をしている。
「なんか疲れた顔しているな」
チェックインの手続きをして、樹里と紀夫のところに戻る。
「ああ。もう2回も温泉に入ってるからな」
それは疲れるわ。
「真紀はどこ?」
樹里が周りを見回す。
「部屋で寝てるんじゃないかな」
紀夫が渡辺さんに電話した。
「隆司たち来たよ。うん、うん。今から上がるよ……待ってるって。行こう」
エレベーターに乗り、部屋のある5階で下りる。
「俺と隆司はこっちで。石野は向かいだ」
樹里たちの部屋は僕たちの向かいみたいだ。
樹里がノックすると、ドアが開き、渡辺さんが顔を出す。
「入って」
「うん。隆司、カバン」
キャリーバッグを樹里に渡す。
樹里はバッグを引っ張って部屋の中に入っていった。
「あれ石野のカバンだったのか?」
「そう」
「お前は召使いか?」
それに近いかも。
部屋に入って、荷物の片付けが終わると、夕ご飯を食べに行こうという話になった。
樹里たちを誘ってレストランへ下りていく。
「今日の夕食は親父に頼んで奮発してもらった。夕食代分は親父が持つから心配するな」
「どうして山崎君のお父さんが私たちの分まで出してくれるの?」
樹里が紀夫を見る。
「俺にカノジョができた祝いだそうだ」
紀夫も僕同様一人っ子だ。よほど紀夫のことが可愛いんだろうな。
それにしても持つべきものは金持ちの友達だ。
たしかに食事は豪華だった。
胡麻豆腐にエビや野菜の天ぷら、鯛やマグロなどのお刺身三種盛り、神戸牛のサーロインステーキ、山菜ご飯に最後はシャーベットまで出てきた。
「フウー、もうお腹いっぱい」
渡辺さんが満足そうに言う。
「ホント。もうこれ以上はいらない」
樹里がお腹を撫でている。
「これからどうする?」
紀夫がみんなの顔を見回した。
「僕は温泉に入るよ。まだ入ってないし」
「わたしもそうするわ」
「樹里が入るなら、わたしも入るわ」
「えっ、また入るの? もう3回目だぜ。大丈夫か?」
紀夫が心配そうに渡辺さんの顔を見る。
「大丈夫よ。せっかく温泉に来たんだから」
渡辺さんは言い張った。
「まあいいけど。俺は部屋にいるよ」
紀夫は仕方なさそうに言った。
僕は着替えの用意をすると、樹里に電話した。
「用意できたけど」
温泉は大浴場になっている。僕は場所を知らないので渡辺さんに連れ行ってもらおうと思った。
「もうちょっと待って。用意できたら電話する」
「わかった」
電話待っていると10分ぐらいしてかかってきた。
「いいよ」
廊下に出ると、樹里と渡辺さんが立っていた。
「行きましょう」
渡辺さんが先に立って歩く。
1階のフロントの奥に大浴場があった。
もちろん男湯と女湯は分かれているので、入り口の前で樹里たちと別れた。
「後でね」
「先に帰っちゃダメよ。わたしたちが出てくるまで待ってなさいよ」
樹里が睨んでくる。
「わかってるよ」
樹里に手を振って浴場に入った。
5分ぐらい浸かって洗い場に上がるということを3回ほど繰り返して、もう限界と思い浴場を出て着替えを済ませ、廊下に出る。
女の人はお風呂が長いからまだいないかと思ったが、渡辺さんが立っていた。
「樹里はまだよ」
「待ってるよ」
待ってないと確実に怒られる。
「樹里、アメリカへ行くんだってね」
渡辺さんは窺うように僕を見た。
「そうみたい」
他に言いようがない。
「平気なの?」
「仕方ないよ」
「そう」
僕にはどうすることもできない。
2人とも押し黙っていると樹里が出てきた。
「何よ。2人とも暗いわね。隆司、散歩に行こう」
樹里が僕の腕を取る。
「真紀はどうする?」
「紀夫を呼んでお土産でも見てるわ」
「わかった。じゃあね」
樹里と僕はホテルの建物を出た。