また悪夢を見た。
石野さんが出てきて、ダイアモンドや高級車を僕にさんざん貢がせたあげく冷たい目で見つめて、
「隆司といてもつまらないから、今日からこの人と付き合うはバイバイ」
と、手を振って背の高いイケメンと腕を組んで去っていく。
僕は呆然と2人の背中をを眺めて佇んでいた。
そこで目が覚めた。
今のは正夢か? 自分の将来を見たのだろうか。
このところまったくついてない。
下手に石野さんには深入りせず、サッサっと別れられる方法を考えよう。
いつものように朝の勉強を済ませて、ダイニングへ下りていく。
「昨日から顔色が悪いけど、大丈夫? 学校で何かあったの?」
僕を見て母さんが心配そうに聞いてくる。
「本当だな。大丈夫か? 入試が近いから勉強のし過ぎじゃないのか」
父さんが見ていた新聞から顔を上げた。
それは買い被りだ。具合が悪くなるまで勉強したりしない。
「なんでもないよ。ちょっと嫌な夢を見ただけだから」
「そう。それならいいんだけど」
母さんはまだ心配そうに見ている。
こんなことぐらいで親に心配を掛けてはいけない。なるべく明るく父さんや母さんと会話をして、出来るだけ元気なふりをして家を出る。
教室に入ると痛いような視線が一斉に突き刺さってくる。
なんでこんな目に会うんだ。
「みんなの目が怖い」
席に座ると、ボソッと呟いた。
「石野にカレシを取られた奴がこのクラスにもいるからな」
紀夫が肩を竦めた。
まあ当分はこの状態が続くということか。
仕方ない。
午前中の授業が終わって昼休みになり、食堂に行こうと思い立ち上がると、 教室にいるクラスメイトの視線が後ろのドアに釘付けになっていた。
紀夫もみんなと同じ方向を見ている。
「どうした」
紀夫に聞くと、無言で後ろの戸口を顎で指す。
指された方を見ると、石野さんが小さなカバンを持って、こちらに向かって歩いてくる。
「お弁当作ってきたから一緒に食べよう。隆司の分も作ってきたから」
石野さんが僕に向かって微笑んだ。
まさか石野さんがお弁当を作ってきてくれるとは思ってもいなかった。
僕はどうしていいかわからず、固まったまま動けない。
「何してるのよ。行くわよ」
石野さんは僕の手を取ると、引っ張って歩き出す。
クラスメイトたちが驚きの目で見ているなか、引っ張っられていく。
「早く行かないと取られちゃうわ。サッサっと歩きなさいよ」
石野さんがすごい勢いで引っ張っていく。
「どこ行くの?」
「いいから」
僕は必死になって足を動かした。
石野さんがテニスコートの方へ僕を連れていく。
テニスコートの金網の外にはいくつかベンチがあり、カップルがそこで昼ごはんを食べていると聞いたことがある。
カノジョがいなかった僕は昼休みに来たことはなかったが、実際に来てみると、まだ昼休みが始まったばかりだというのにカップルでほとんどのベンチが埋まっていて一つしか空いていない。
僕をその空いていたベンチに座らせると、石野さんはベンチの前に立ったままなかなか座らない。
なぜ座らないのかなあとじっと石野さんを見た。
「何してるの? 普通女性が座わろうとしてたら直接ベンチに座らすようなことはしないでしょう。ハンカチぐらい敷いてくれたらどうなの」
あっ、そうか。
テレビやドラマでそういうことをしているのを見たことがある。
慌ててハンカチを出して、敷くと、石野さんはその上に悠然と座った。
これからは、普通のハンカチとは別にもう少し大き目のハンカチを持ってこよう。
「はい。これ、隆司のお弁当」
石野さんが可愛い花柄のついた弁当箱を差し出す。
「ありがとう」
僕は受け取ると、弁当箱を開いた。
中には、チキンライス、ハンバーグ、スクランブルエッグ、きゅうりやレタスにトマトが入ったサラダ、リンゴなどが彩りも考えられて綺麗に盛り付けられている。
ありがたく食べようと思ったが、弁当箱と箸を持ったままじっと考えた。
昨日、石野さんは嫌がらせで付き合うと言った。
ひょっとして、一見美味しそうに見えるが、実はすごく辛かったり、とてつもなく不味かったりするのではないだろうか。
あるいは何か入っているとか。
「何も入れてないわよ」
じっと中を見つめている僕に気づいて、石野さんが呆れたように言う。
「そう?」
疑心暗鬼の目で弁当箱を見つめた。
「そんな分かりにくい嫌がらせはしないわ。大丈夫よ」
石野さんはパクパク食べ始める。
「いただきます」
僕もつられて食べてみた。
「美味しい」
母さんの料理も美味しいが石野さんのお弁当も負けなぐらい美味しい。
「そう。よかったわ。口に合ったみたいで」
石野さんはニコリともせずに言った。
「全部美味しいんだけど、このチキンライスが特に美味しいよ」
「当たり前でしょう。わたしが作ったんだから」
すごい自信だね。
石野さんが出てきて、ダイアモンドや高級車を僕にさんざん貢がせたあげく冷たい目で見つめて、
「隆司といてもつまらないから、今日からこの人と付き合うはバイバイ」
と、手を振って背の高いイケメンと腕を組んで去っていく。
僕は呆然と2人の背中をを眺めて佇んでいた。
そこで目が覚めた。
今のは正夢か? 自分の将来を見たのだろうか。
このところまったくついてない。
下手に石野さんには深入りせず、サッサっと別れられる方法を考えよう。
いつものように朝の勉強を済ませて、ダイニングへ下りていく。
「昨日から顔色が悪いけど、大丈夫? 学校で何かあったの?」
僕を見て母さんが心配そうに聞いてくる。
「本当だな。大丈夫か? 入試が近いから勉強のし過ぎじゃないのか」
父さんが見ていた新聞から顔を上げた。
それは買い被りだ。具合が悪くなるまで勉強したりしない。
「なんでもないよ。ちょっと嫌な夢を見ただけだから」
「そう。それならいいんだけど」
母さんはまだ心配そうに見ている。
こんなことぐらいで親に心配を掛けてはいけない。なるべく明るく父さんや母さんと会話をして、出来るだけ元気なふりをして家を出る。
教室に入ると痛いような視線が一斉に突き刺さってくる。
なんでこんな目に会うんだ。
「みんなの目が怖い」
席に座ると、ボソッと呟いた。
「石野にカレシを取られた奴がこのクラスにもいるからな」
紀夫が肩を竦めた。
まあ当分はこの状態が続くということか。
仕方ない。
午前中の授業が終わって昼休みになり、食堂に行こうと思い立ち上がると、 教室にいるクラスメイトの視線が後ろのドアに釘付けになっていた。
紀夫もみんなと同じ方向を見ている。
「どうした」
紀夫に聞くと、無言で後ろの戸口を顎で指す。
指された方を見ると、石野さんが小さなカバンを持って、こちらに向かって歩いてくる。
「お弁当作ってきたから一緒に食べよう。隆司の分も作ってきたから」
石野さんが僕に向かって微笑んだ。
まさか石野さんがお弁当を作ってきてくれるとは思ってもいなかった。
僕はどうしていいかわからず、固まったまま動けない。
「何してるのよ。行くわよ」
石野さんは僕の手を取ると、引っ張って歩き出す。
クラスメイトたちが驚きの目で見ているなか、引っ張っられていく。
「早く行かないと取られちゃうわ。サッサっと歩きなさいよ」
石野さんがすごい勢いで引っ張っていく。
「どこ行くの?」
「いいから」
僕は必死になって足を動かした。
石野さんがテニスコートの方へ僕を連れていく。
テニスコートの金網の外にはいくつかベンチがあり、カップルがそこで昼ごはんを食べていると聞いたことがある。
カノジョがいなかった僕は昼休みに来たことはなかったが、実際に来てみると、まだ昼休みが始まったばかりだというのにカップルでほとんどのベンチが埋まっていて一つしか空いていない。
僕をその空いていたベンチに座らせると、石野さんはベンチの前に立ったままなかなか座らない。
なぜ座らないのかなあとじっと石野さんを見た。
「何してるの? 普通女性が座わろうとしてたら直接ベンチに座らすようなことはしないでしょう。ハンカチぐらい敷いてくれたらどうなの」
あっ、そうか。
テレビやドラマでそういうことをしているのを見たことがある。
慌ててハンカチを出して、敷くと、石野さんはその上に悠然と座った。
これからは、普通のハンカチとは別にもう少し大き目のハンカチを持ってこよう。
「はい。これ、隆司のお弁当」
石野さんが可愛い花柄のついた弁当箱を差し出す。
「ありがとう」
僕は受け取ると、弁当箱を開いた。
中には、チキンライス、ハンバーグ、スクランブルエッグ、きゅうりやレタスにトマトが入ったサラダ、リンゴなどが彩りも考えられて綺麗に盛り付けられている。
ありがたく食べようと思ったが、弁当箱と箸を持ったままじっと考えた。
昨日、石野さんは嫌がらせで付き合うと言った。
ひょっとして、一見美味しそうに見えるが、実はすごく辛かったり、とてつもなく不味かったりするのではないだろうか。
あるいは何か入っているとか。
「何も入れてないわよ」
じっと中を見つめている僕に気づいて、石野さんが呆れたように言う。
「そう?」
疑心暗鬼の目で弁当箱を見つめた。
「そんな分かりにくい嫌がらせはしないわ。大丈夫よ」
石野さんはパクパク食べ始める。
「いただきます」
僕もつられて食べてみた。
「美味しい」
母さんの料理も美味しいが石野さんのお弁当も負けなぐらい美味しい。
「そう。よかったわ。口に合ったみたいで」
石野さんはニコリともせずに言った。
「全部美味しいんだけど、このチキンライスが特に美味しいよ」
「当たり前でしょう。わたしが作ったんだから」
すごい自信だね。